セカンドカー割引とは?割引の対象になる条件を解説

「自動車保険の保険料を安くしたい」

「セカンドカー割引を利用したいけど、自分は対象になるのか?」

と思ったことはありませんか?

この記事では主に、セカンドカー割引の概要、適用されるための条件について解説します。

セカンドカー割引を利用すれば、自動車保険料が安くなります。これから車を購入する方や、家族で車を購入する予定の人がいる方は、保険料が通常より割安になるかもしれません。

しかも、セカンドカー割引が適用される条件は、それほど厳しいものではありません。

ぜひ条件を確認していただき、自動車保険料の節約につなげていきましょう。

 

セカンドカー割引では7等級からスタート

セカンドカー割引とは、名前の通り2台目以降の車の保険料が安くなる制度です。複数所有新規契約とも言います。1台目の自動車保険を他社で契約していても、セカンドカー割引を受けることが可能です。

通常、自動車保険を初めて契約すると、ノンフリート等級制度の等級は6等級からスタートします。

ノンフリート等級制度とは、等級に応じて、自動車保険料が割増・割引される制度のことです。ノンフリート等級制度では、一般的に等級が上がるほど保険料は安くなります。

セカンドカー割引を利用すれば、等級を1つ上の7等級から始めることができます。よって、自動車保険料が安くなる仕組みです。

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セカンドカー割引が適用される条件

セカンドカー割引を適用するには、以下7つの条件があります。

  1. 1台目の車が11等級以上である
  2. 1台目の車が自家用8車種である
  3. 1台目の車の所有者は個人である
  4. 2台目の車は、初めて自動車保険を契約する
  5. 2台目の車も自家用8車種である
  6. 2台目の車の所有者が個人で、以下に該当する
  7. 2台目の記名被保険者が以下に該当する

1台目の車の条件3つ、2台目の車の条件4つをそれぞれ解説します。

1.1台目の車が11等級以上である

2台目の自動車保険の始期日に、1台目の車のノンフリート等級が11等級以上である必要があります。

2.1台目の車が自家用8車種である

1台目の車が、自家用8車種であることが2つめの条件です。自家用8車種とは、以下の車を指します。

  • 自家用普通乗用車
  • 自家用小型乗用車
  • 自家用軽四輪乗用車
  • 自家用小型貨物車
  • 自家用軽四輪貨物車
  • 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン以下)
  • 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン超2トン以下)
  • 特種用途自動車(キャンピングカー)

通常の自家用車であれば、自家用8車種に該当するので、問題ありません。

3.1台目の車の所有者は個人である

1台目の車の所有者が、個人であることが3つ目の条件です。

車をローンで購入した場合、所有者はローン会社・リース会社・ディーラーになっています。この場合、使用人の欄が個人の名前になっていれば、条件に合致します。

4.2台目の車は、初めて自動車保険を契約する

2台目の車は、自動車保険の契約が初めてであることが4つ目の条件です。

2台目の車が他人から譲り受けたものであっても、問題ありません。他人の名義で入っている保険を解約し、自分の名義で加入しても、新規の自動車保険の契約と見なします。

「後からセカンドカー割引のことを知ったので、利用したい」と思っても、すでに保険契約をしていたら利用できません。

5.2台目の車も自家用8車種である

2台目の車も、自家用8車種であることが5つ目の条件です。通常の自家用車であれば、問題ありません。

6.2台目の車の所有者が個人で、以下に該当する

「以下に該当する」の内容は、次の通りです。

  1. 1台目の記名被保険者と同一
  2. 1台目の記名被保険者の配偶者
  3. 1.もしくは2.と同居している親族
  4. 1台目の車の所有者と同一

記名被保険者は、保険の対象となる車をメインで運転する人を指します。

所有者については、ローン会社・リース会社・ディーラーの場合でも、使用者が個人の名義であれば問題ありません。

また、配偶者であれば別居していても条件に合致します。

7.2台目の記名被保険者が以下に該当する

「以下に該当する」の内容は、次の通りです。

  1. 1台目の記名被保険者と同一
  2. 1台目の記名被保険者の配偶者
  3. 1.もしくは2.と同居している親族

6つ目と7つ目の条件としては、所有者や記名被保険者が、同居している家族や自分であれば、条件を満たしていることになります。

セカンドカー割引では、補償の重複に注意

セカンドカー割引を利用する際に、注意しなければならないのが補償の重複です。

補償の重複とは、補償内容が重複することです。複数の保険に加入することによって発生します。補償が重複すれば、補償につながらない保険料を支払っている恐れがあります。重複を避けるために確認したいのは、補償の範囲です。

2台目の車で自動車保険を利用すると、1台目の保険と重複することがあります。よく重複する補償は、以下の通りです。

  • 人身傷害保険:過失の割合によらず、実際に発生した損害を補償
  • 弁護士費用特約:車に関係する損害賠償を請求する際に、弁護士への依頼費を補償
  • ファミリーバイク特約:原動機付自転車を運転中に発生した事故を補償

人身傷害保険は、契約以外の車に乗っているときや、歩行中に起こった事故を補償する契約もあります。もし、2台目の車と補償が重複していたら、契約している車に搭乗中している時のみを補償の範囲としましょう。

弁護士費用特約とファミリーバイク特約に関しては、1台目の契約にそれぞれの特約をつければ、問題ありません。どちらも、記名被保険者やその家族、または所有する車についても補償の範囲になっているためです。

保険会社によっては、補償の内容や条件が異なる場合があります。契約している保険会社に確認してみましょう。

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セカンドカー割引以外に2台目の保険料を節約する方法

ここまで、セカンドカー割引の概要をお伝えしました。

「1台目の車が11等級未満だ」

「セカンドカー割引以外に、保険料の割引はないのか?」

と思っている方に向けて、セカンドカー割引とは別に、保険料を節約する方法をご紹介します。

車両入替

車両入替でも、自動車保険料の割引になることがあります。

車両入替とは、自動車保険を契約している人が新しく車を購入した際、補償の対象となる車を変更することです。

割引になるケースとしては、子が親の等級を引き継ぐ事例が挙げられます。親の等級が15等級で、子が新しく車を購入する場合を考えてみましょう。車両入替をすると、親は子の等級を引き継いで7等級に、子は親の等級を引き継いで15等級になります。

自動車保険では、運転する人の年齢や、保険の年齢条件で保険料が高くなります。年齢が若い人の方が、事故を起こしやすい傾向にあるので、保険料が高めに設定されているためです。

車両入替を行えば、親は低い等級となり、割引率も低くなってしまいます。しかし、子より年齢が高いため、保険料が安くなるのです。

 

一方、子の場合は年齢が若いので「全年齢補償」や「21歳以上補償」を適用することになります。これらは保険料が高く設定されていますが、挙げた例では親の15等級を引き継いでいます。よって、15等級の割引が適用されて、親と子の保険料はトータルで見ると安くなります。

年齢や等級が高いほど、車両入替による割引の効果も高まります。そのため、例で挙げたように親子間で車両入替を行うのがおすすめです。同居していれば、車両交換で等級の引継ぎができる可能性が高いので、保険会社に確認してみましょう。

 

他の割引制度

セカンドカー割引以外にも以下のような割引制度があります。

  • 複数契約割引:2台以上で同じ自動車共済に加入すると受けられる
  • マルチオーナーシップ割引:2台以上で同じ自動車保険に加入すると受けられる
  • ノンフリート多数割引:2台以上の自動車を1保険証券で契約すると受けられる

セカンドカー割引は、保険会社が共通で行っている割引制度です。一方、上記の割引は保険会社が独自で行っている制度になります。

同じ保険会社で、同じ契約者が、自分や同居している親族の車で保険に加入することが、割引の主な条件です。1台目も2台目も割引の対象で、割引率は1~7%ほど。車の台数や条件によって割引率が異なります。

セカンドカー割引と併用できる保険会社もあります。車両入替とも比較して確認してみることをおすすめします。

まとめ

この記事では、セカンドカー割引について、以下の内容を解説しました。

  • 2台目の車が7等級からスタート可能
  • 1台目の車は、11等級以上であることが主な条件
  • 2台目の車は、同居している家族や自分の車で、新規で保険に入ることが主な条件
  • 補償の重複に注意
  • 車両入替や、保険会社が独自にやっている割引もあり

とめると、1台目の車が11等級以上で、2台目の車の所有者が同居している家族であれば、ほとんどの人が加入できます。

車の保険料は、多くの人が毎月の固定費として支払っていると思います。固定されている出費だからこそ、一度見直せば節約の効果は絶大です。

ご紹介したセカンドカー割引や、その他の割引方法を活用して、保険料を抑えていきましょう。

人身傷害補償特約とは?補償内容や搭乗者傷害との違いについて解説

自動車保険において基本の補償となる「人身傷害」。保険会社によって「人身傷害保険」や「人身傷害補償特約」などさまざまな呼び方があります。事故による損害が生じた場合、自分を含む同乗者のために使われる保険です。

しかし「保険金額をいくらに設定すれば良いのか?」「搭乗者傷害保険との違いは何か?」と悩む人は多いのではないでしょうか。

 

そこで今回は人身傷害補償特約について、補償の内容や考え方、搭乗者傷害との違いを詳しく解説していきます。いつもなんとなく保険金額を設定しているという人は、ぜひ参考にしてみてください。

人身傷害補償とは?

自動車事故により、自分や同乗者がケガや死亡・高度障害を負ったとき、事故の過失割合に関係なく、人身傷害補償特約から補償が受けられます。自動車保険の基本補償として初めから付帯されていることが一般的です。

人身傷害補償の特徴は、「示談交渉を待たずに保険金を受け取れる」こと。実損額さえ決まれば保険金を受け取れ、さらに翌年以降の等級が下がらない点は大きなメリットだといえます。

万一の際に受け取れる保険金額は、最低3,000万円から無制限まで、契約者が自由に決められます。

 

また補償の範囲によっては、運転中の事故に限らずすべての自動車事故において補償を受けることも可能です。

相手側の自賠責保険や任意保険から補償がおりる場合にはそちらから優先して保険金が支払われ、こちらに過失割合があるといった理由で補償が足りない場合のみ、人身傷害補償から補償を受けます。

人身傷害の補償内容

人身傷害補償では、自分を含む同乗者全員のケガや死亡時などにおいて、過失割合に関係なく「実損額」が支払われます。具体的な補償内容は以下の通りです。

  • ケガの治療費
  • 休業損害
  • 精神的損害(慰謝料)
  • 死亡・高度障害の場合の逸失利益(※) など

(※)逸失利益とは・・・事故に遭わなければ得られていたはずの収入のこと。

さらに補償の範囲は、以下の2通りに分かれます。詳しく見ていきましょう。

契約の車に乗車中の事故のみ補償

契約の車を運転している際に発生した事故のみ人身傷害補償が受けられる、いわゆる“限定プラン”です。補償の範囲が限定されるため、比較的割安な保険料で付帯できます。

自動車事故全般を補償

タクシーやバスなども含む、契約以外の車に乗車中の事故や歩行中に起きた事故など、自動車事故ならどんな場面でも補償が受けられるのが、通常の人身傷害補償の対象範囲となっています。

シーンを問わず、すべての自動車事故に対して補償が受けられるため安心度は高くなりますが、その分補償範囲がかなり広くなるため、保険料は割高となります。

 

日常的に家族がどのような移動手段を使うケースが多いか、また他に加入中の傷害保険や生命保険から補償が受けられないかなどを考慮して、補償内容がかぶらないように対応するのが大切です。

保険金額はいくらに設定すれば良い?

一般的に人身傷害補償の保険金額は、最低補償金額の3,000万円に設定する人が多いです。

とはいえ、契約者の年齢や扶養家族の有無などに応じて、推奨される保険金額の目安は異なります。

それ以外にも人身傷害補償の保険金額を決める際に考慮しておきたい事項が3つあるので、それぞれ見ていきましょう。

もらい事故の場合は相手の保険から補償される

人身傷害補償は、過失割合に関係なく自分側の損害に対する補償を受けられる保険です。もらい事故の場合は、たとえ相手が無保険車であっても、最低限自賠責保険からの補償は受け取れます。以下、自賠責保険の補償内容を見てみましょう。

 

自賠責保険の支払事由 補償内容 支払限度額
傷害 治療費、休業損害、慰謝料など 120万円
後遺障害 逸失利益、慰謝料など 75~4,000万円(介護の等級により異なる)
死亡 葬儀費(100万円)、逸失利益、慰謝料など 3,000万円

※参考:国土交通省|自賠責保険ポータルサイトより

 

またその他にも相手が任意保険に加入していれば、対人賠償保険からも補償を受けられます。対人賠償は多くの場合「無制限」で設定されるケースが多いです。つまり過失割合が10:0のもらい事故のケースでは、人身傷害補償を使う可能性は低くなるでしょう。

ただし示談交渉が長引き、相手側からの保険金が長期間にわたり支払われずにいる場合には、人身傷害補償からの保険金が受け取れないか、加入中の保険会社に相談も可能です。

保険金額を大きく設定しても意味がない?

人身傷害補償は、あくまでも「実損額」しか支払われません。また、実損額の基準は保険会社が定めるものであり、実際に支払った金額がすべて支払われるわけでもありません。

保険金額を大きくしすぎても、必ずしもその金額の上限まで受け取れるとは限らないため注意が必要です。

保険金が支払われない事例もある

人身傷害補償では、過失割合に関わらず保険金が受け取れると説明しましたが、下記のような例では保険金が支払われない場合もあります。

 

  • 無免許や酒気帯びによる事故
  • 故意による事故(あおり運転も含む)
  • 競技などに使用したときに起きた事故
  • 地震、噴火、津波による事故 など

 

自然災害による事故や、当たり前ではありますが交通違反をして発生した事故に対して保険金は支払われないため、注意しましょう。

搭乗者傷害保険との違いは?

任意保険には、人身傷害とよく似た補償内容の「搭乗者傷害保険」もあります。

搭乗者傷害保険との違いについてよく分からないという人も多いのではないでしょうか。

ここでは、「人身傷害」と「搭乗者傷害」の補償内容の違いについて解説いたします。

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保険金を受け取れる時期が違う

人身傷害補償は実損額が支払われるため、実損額を把握できる状況になってからでないと保険金を受け取れません。

しかし搭乗者傷害は、一定の条件を満たせばすぐに、あらかじめ設定された保険金が支払われるため、実際に治療にかかる費用などにそのまま保険金を充てられます。

このように「保険金を受け取れる時期の違い」は、大きなポイントだといえるでしょう。

受け取れる金額が違う

人身傷害補償ではあらかじめ設定した保険金額を上限として、実損額が支払われます。そのため損害額によっては1,000万円単位の一時金が支払われることも。

しかし搭乗者傷害は、ケガの状態(入院日数)に応じて、およそ1~10万円程度の一時金しか支払われません。死亡・高度障害の場合は、あらかじめ設定した保険金額(一般的には500~3,000万円の範囲内)を受け取れますが、その場合、人身傷害補償からも保険金はおりるため、補償を大きくし過ぎないように注意が必要です。

補償の対象となる事故が違う

人身傷害で一般タイプと呼ばれる「自動車事故全般」の補償を受けられる契約の場合は、補償の対象となる事故が異なります。

搭乗者傷害では、あくまでも「契約の車に乗車中に起きた事故」のみ補償が受けられます。人身傷害補償の一般タイプを契約していても、バスやタクシーなど他の車に乗車中の事故の際は、搭乗者傷害からの補償は受けられません。

対人賠償保険との違いは?

対人賠償保険からも同乗者に対して保険金が支払われるケースがありますが、対人賠償の補償対象はあくまでも「他人」です。

同乗者であっても自分や家族以外の友人や知人などであれば、対人賠償保険から優先して補償を受けることになります。対人賠償は無制限に設定するケースがほとんどなので、その場合、人身傷害からの補償を必要とする可能性は極めて低いと考えられます。

 

つまり、人身傷害補償特約から他人に対する補償は考えなくても良い点に注意しましょう。

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人身傷害補償特約の賢い考え方

人身傷害補償はどのように考えて保険金額や補償の有無を設定すれば良いのでしょうか。

ここまで解説してきた内容も踏まえた上で、賢い補償の考え方についてチェックしてみましょう。

死亡時の補償とは切り分けて考える

人身傷害補償特約を利用する場面で考えられる、もっとも大きな損害は「死亡・高度障害」の場合です。しかし生命保険に加入している人は、死亡・高度障害時における補償に関しては、すでに十分備わっている可能性が高いと考えられます。

その場合、死亡・高度障害時の補償とは切り分けて考え、ケガによる損害のみを考慮して保険金額を設定すると良いでしょう。

 

参考までに、休業損害額の計算方法は「1日あたりの基礎収入 × 休業日数」となります。

1日あたりの基礎収入額は、事故発生前の3ヶ月間の収入をすべて足して90日で割る計算方法が一般的です。(職業別に計算式が異なります)

 

なお、休業損害は仕事をしていない専業主婦の方でも受け取れます。

例えば夫婦で車に乗ることが多いといった場合には、最低限夫婦2人分の補償が確保できるように保険金額を設定すると良いでしょう。

補償が重複しないか確認する

任意保険の人身傷害補償は、すでに加入中の生命保険や医療保険と、補償が重複する可能性が大いに考えられます。任意保険は自動車事故の場合のみ補償されるのに対し、生命保険はケガや死亡の理由を問わず、要件を満たせば保険金が支払われるからです。

 

また、バイク保険や自転車保険といった任意保険との重複も考えられます。

補償を大きくしすぎても、設定した保険金額すべてを受け取れるわけではありません。それどころか保険料を多く払いすぎることになるため、契約の際には他に加入している保険の内容をしっかりと確認しましょう。

まとめ

今回は人身傷害補償について、補償の内容や考え方、搭乗者傷害との違いを詳しく解説しました。

 

人身傷害補償は「対人賠償保険」や「搭乗者傷害補償」をはじめ、生命保険やバイク保険といった補償と内容が重複しやすく、保険金額の正しい設定の仕方が分かりづらい特約でもあります。

 

基本的には年齢や扶養家族の有無、年収以外、他の保険の加入状況などを考慮した上で保険金額を設定しましょう。

そのとき、人身傷害補償は「実損額」しか支払われない点や、もらい事故の場合は相手側の自賠責や対人賠償保険からも補償が受け取れる点に注意してください。

搭乗者傷害保険とは?メリット・デメリット、人身傷害保険との違い

「搭乗者傷害保険に入ろうと思っているけど、本当に必要?」

「人身傷害保険と似ているけど、何が違うんだろう?」

このように思うことはありませんか?

 

この記事では、搭乗者傷害保険の概要について解説します。

搭乗者傷害保険をよく理解しないまま契約してしまうと、補償内容が被ってしまう恐れがあります。その分、保険料を余計に払ってしまいかねません。

ぜひ最後までご覧いただき、適切な保険に加入し、無駄な保険料は削減しましょう。

搭乗者傷害保険とは

搭乗者傷害保険では、契約している車に乗るすべての搭乗者が対象です。死亡・後遺障害・医療保険金が受け取れます。

 

また、搭乗者傷害保険は、過失の割合によって保険金額が変わりません。過失の割合とは、自動車の事故において当事者の過失を「70:30」のように数字で表したもの。自動車の事故は、当事者たちの不注意によって起こります。当事者のどちらかだけに、全責任が降りかかることは非常に稀です。

 

対人賠償保険や対物賠償保険では、補償の対象がまったくの他人や他人の物に限られています。一方、搭乗者傷害保険は、契約している車に乗る全員が補償の対象である点が、最大の特徴です。

搭乗者傷害保険では保険金はいくら受け取れる?

搭乗者傷害保険では、もらえる保険金はケガの部位や程度によって異なります。

 

一般的に、治療が4日以内であれば「治療給付金」として、治療1回につき1万円の受け取りが可能です。5日以上の治療になれば「入院給付金」としてもらえる保険金が多くなります。ケガの部位や程度で金額が変わってきますが、目安としては以下の通りです。

 

  • 打撲:約5万円
  • 骨折:約20~35万円
  • 切断:約15~60万円

 

切断でも、顔面であれば15万円ほどで、腕の切断はおよそ60万円と、大きく金額差があります。

人身傷害保険との違い

搭乗者傷害保険との違いについて、よく疑問に思われるのが、人身傷害保険。どちらも事故によって、契約者や搭乗者がケガもしくは死亡した場合に備える保険です。

搭乗者傷害保険と人身傷害保険の違いは、主に以下の通りです。

 

  • 保険金の受け取り時期
  • 支払いの仕組み

 

それぞれ解説します。

保険金の受け取り時期

人身傷害保険と搭乗者傷害保険の違いとして、まず保険金を受け取る時期が異なる点が挙げられます。

人身傷害保険の保険金の受け取りは、損害額が確定した後です。示談交渉を待つことなく補償が受けられます。

 

示談交渉とは、当事者同士の話し合いにより、裁判の外で法律上の紛争を解決しようとすること。交通事故の場合は一般的に、損害賠償は示談で解決します。

 

搭乗者傷害保険は、医師の診断で入院や通院が5日以上経った後に保険金が受け取れます。治療にお金がかかるので、一時的に医療費を補てんする意味合いがあります。

タイミングとしては、搭乗者傷害保険の方が早く受け取りが可能です。人身傷害保険は示談交渉の前に受け取れますが、搭乗者傷害保険よりも遅くなります。

支払いの仕組み

保険金の支払いの仕組みについても、人身傷害保険と搭乗者傷害保険で違いがあります。

 

人身傷害保険の保険金は、およそ3,000万円~1億円。場合によっては無制限のケースもあります。損害額の算定基準に基づいて、過失の割合にかかわらず、損害額の総額を給付。後遺障害があって介護が必要な状態となれば、保険金額の2倍までを上限に、損害額が支払われます。損害額は、治療費・葬祭費用・休業損害なども含んだ金額です。

 

休業損害とは、交通事故の被害者が働けない間の、収入の減少による損害です。主に、会社を休んだことにより、給与や賞与が支払われなかったケースが該当。休業損害は「1日当たりの損害額×休んだ日数」で計算します。

 

一方、搭乗者傷害保険では、定額が支払われます。ここでの「定額の支払い」とは、実際にかかった金額ではなく、あらかじめ症状や部位ごとに決められた金額が支払われる、という意味です。治療費・葬祭費用・休業損害は含みません。

 

搭乗者傷害保険では、事故から180日以内に限り、後遺障害が発生した場合も補償があります。後遺障害の等級に応じて保険金額の4~100%が受け取れます。死亡や後遺障害の保険金は、医療保険とは別枠で支給されます。

搭乗者傷害保険は、人身傷害保険の上乗せ的な位置づけです。より手厚い補償を受けたい方向けと覚えておきましょう。

補償の重複に注意

ここまでご覧になって「搭乗者傷害保険と人身傷害保険に加入しよう」と思っている方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、搭乗者傷害保険と人身傷害保険の両方に加入する場合は「補償の重複」に注意が必要です。

 

「補償の重複」とは、複数の保険に加入することによって、補償内容に重複が発生してしまうこと。重複することで、補償につながらない保険料を支払っている恐れがあります。重複を避けるために確認したいのは、補償の範囲。

 

人身傷害保険では「車外の補償」について重複の恐れがあります。「車外の補償」とは、歩行中や、他の車へ乗車している際にあった事故の補償です。特に、家族がすでに人身傷害保険を付帯した保険を契約している場合は要注意。「車外の補償」が2つ以上の保険で被ってしまいます。

対策としては、一方の保険を搭乗中のみの補償とすることで、重複を避けられます。また、人身傷害保険を契約していると、搭乗者傷害保険は非加入とする保険会社があります。中には、搭乗者傷害保険をもともと取り扱ってない保険会社も存在します。

 

補償の重複を避けるには、補償の重複が発生しない仕組みを取っている保険会社を選ぶのも手です。契約の際には、重複が発生していないか確認しましょう。

搭乗者傷害保険のメリット

ここまで、搭乗者傷害保険と人身傷害保険の違いを中心に解説しました。ここからは、搭乗者傷害保険のメリットを以下3つご紹介します。

 

  1. ケガの症状が分かったら、すぐに保険金を受け取れる
  2. 他の保険金を受け取ったか否かに影響されない
  3. 等級に影響しない

 

それぞれ解説します。

1.ケガの症状が分かったら、すぐに保険金を受け取れる

搭乗者傷害保険のメリット1つ目は、医師の診断が確定したら、すぐに保険金を受け取れること。

前述したように、治療にかかる日数によって、以下が給付されます。

 

  • 治療給付金:治療が4日以内
  • 入院給付金:治療が5日以上

 

お金の負担を減らして治療が受けられるのは、大きなメリットです。

2.他の保険金を受け取ったか否かに影響されない

搭乗者傷害保険のメリット2つ目は、他の保険金を受け取ったか否かに影響されない点。

 

たとえば、自賠責保険の保険金や、事故相手からの損害賠償金を受け取ったとします。保険によっては、他に保険金を受け取っていると補償が受けられない場合があります。しかし、搭乗者傷害保険は、他の保険金の受け取りや金額に左右されません。

 

前もって決められた金額が支払われるのは、安心できる点です。

3.等級に影響しない

搭乗者傷害保険のメリット3つ目は、等級に影響しない点

 

搭乗者傷害保険のみを利用した場合は、ノーカウント事故になります。ノーカウント事故とは、ノンフリート等級制度において、事故件数として扱わない事故のことです。ノンフリート等級制度では、保険を利用した事故があると翌年の等級はダウン。同時に、保険料は値上がりします。そのため、賠償金額が少ない場合、保険を使わずに自分の貯金で賄うケースがあります。

 

しかし、搭乗者傷害保険は、利用してもノーカウント。「翌年からの保険料が上がってしまう」と心配する必要はありません。補償が受けられるのであれば、活用していきましょう。

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搭乗者傷害保険のデメリット

搭乗者傷害保険のメリットをお伝えしましたが、ここからは、デメリットを以下2つ紹介します。

 

  1. 超過した分の医療費は自己負担
  2. 補償を付帯しすぎると、保険料が高くなる

 

それぞれ解説します。

1.超過した分の医療費は自己負担

搭乗者傷害保険のデメリット1つ目は、定額を超えた分の医療費は自己負担であること

 

搭乗者傷害保険では、実際にかかった医療費に関係なく、決まった金額を受け取ります。医療費があまりかからなかった場合は、問題ありません。しかし、定額を超えてしまったら、その分は自己負担になります。

 

良くも悪くも、支給額が一定の搭乗者傷害保険。「医療費が高額になって負担が大きくなった場合はどうするか?」「他の保険でカバーできないか?」を考えてみましょう。

2.補償を付帯しすぎると、保険料が高くなる

搭乗者傷害保険のデメリット2つ目は、補償を付けすぎると保険料が高くなってしまう点

不安になって補償を付帯しすぎれば、その分支払う保険料は高くなってしまいます。また、前述した補償の重複も発生しかねません。

 

自動車保険に限った話ではありませんが、充実した補償がある分、保険料の負担は膨らみます。本当に必要な補償なのか、検討してみましょう。

搭乗者傷害保険の補償の対象と対象外のケース

搭乗者傷害保険では、どんな事故でも補償が受けられるわけではありません。

具体的に、搭乗者傷害保険で補償の対象となるケース・対象外のケースをご紹介します。

 

補償の対象になるケースは、適切に乗車していた際に起こった事故の場合。具体的には、以下のようなケースです。

 

  • シートベルトやチャイルドシートを使っていた場合
  • 台風・洪水・高潮による被害が発生した場合

 

上記のケースでケガ・入院・障害が残った際には、搭乗者傷害保険が適用されます。

一方、補償の対象外になるケースは、主に不適切な乗り方をしていた場合。具体的には、以下が挙げられます。

 

  • 無免許
  • 定員オーバー
  • 酒気帯び運転
  • 荷台への乗車
  • サンルーフや窓から手足を出している

 

他にも、車から降りた後の事故や、地震・噴火・津波による被害も対象外です。台風・洪水・高潮とは異なり、地震・噴火・津波に備えるには、地震保険や火災保険を契約する必要があります。

 

地震・噴火・津波が補償の対象外である理由は、適切な保険料を設定するのが難しいため。背景には、地震・噴火・津波は、起こる時期や頻度を予測することは困難であること、一度に大きな損害が発生することが挙げられます。

地震・噴火・津波に備えたいのであれば、保険会社によっては特約を付帯できます。契約している保険会社に確認してみましょう。

まとめ

この記事では、搭乗者傷害保険について、以下の内容を中心にお伝えしました。

 

  • 搭乗者傷害保険は、契約している車に乗るすべての人が対象
  • 保険金は、ケガの程度や部位によって異なるが、およそ5~60万円が受け取れる
  • 人身傷害保険より、搭乗者傷害保険は、保険金の受け取り時期が早い
  • 他の保険金の受け取りにかかわらず、受け取りが可能
  • 搭乗者傷害保険を利用しても、等級に影響しない
  • 医療費がどれだけかかっても、保険金は定額

 

搭乗者傷害保険は、人身傷害保険のプラスアルファとして捉えるとイメージしやすくなります。

他に加入している保険や、万が一への備えがどれほどできているのかによって、加入すべきか否かは変わります。加入する際は、保険料の金額や補償の重複に注意して、事故が起こってしまった場合に備えましょう。

任意保険の記名被保険者とは?契約者との違いと変更の際の注意点を解説

任意保険には契約者の他に「記名被保険者」という名義人の申告が必要です。契約者との違いを理解せず誤った手続きを行うと、いざというときに告知義務違反とみなされ、保険金が降りないことも考えられます。それだけでなく、保険料や等級に影響を及ぼすことも。そのため正しく理解した上で、適切に申告しなければなりません。

 

今回は任意保険の記名被保険者について、契約者との違いや変更時の注意点を詳しく解説していきます。いずれも任意保険への加入を検討している人からすでに加入中の人まで知っておきたい情報ですので、ぜひ参考にしてください。

 

記名被保険者とは

記名被保険者は分かりやすく言うと「家庭の中で日常的に車を使用する人」のことです。家族の中に運転者が複数いれば、その中でもっとも車を使用する頻度が高い人を記名被保険者にします。

記名被保険者を誰にするかによって保険料や等級が決まるため、自動車保険における重要人物ともいえるでしょう。

 

具体的には記名被保険者の「年齢」「免許証の色」「等級(事故歴)」の3つの要素によって、保険料率が変動します。

任意保険に必要な3つの名義

そもそも任意保険に必要な名義は、全部で3つ挙げられます。必要な名義は下記の通り。

  • 契約者
  • 記名被保険者
  • 車両所有者

複雑になりがちな「3つの名義」について、それぞれの特徴をチェックしていきましょう。

契約者

契約者とは保険会社との間に保険契約を結び、保険料の支払い義務がある人のことをいいます。加えて、更新や契約内容の変更などを行う権利を持ち合わせる人です。

記名被保険者を変更する必要が生じたときは、契約者本人から保険会社に問い合わせをして手続きを行います。

記名被保険者

前述の通り、記名被保険者は日常的に車を運転する人のことです。

また補償の中心となるのも記名被保険者。保険料や等級はもちろん、実際に補償を受ける際にも記名被保険者を中心に補償の対象が決定されます。

車両所有者

その名の通り、車を所有する人=車両所有者です。

ローンで購入した車やリース車などの場合、車検証の所有者の欄にはローン会社やディーラー、リース会社などが記載されていると思いますが、そのようなケースでは「使用者=所有者」とみなされます

これらの3つの名義はすべて異なることもありますが、特に問題はなく契約が可能です。

ただし、問題なく契約できるのはあくまでも3つの名義人がそれぞれ家族関係にあるときの話。さらに“同居の家族”という条件も加わります。

 

例えば友人から車を譲り受けるときは、車(車検証)は名義変更ができても、任意保険を譲り受けることはできませんよね。

基本的には同居の家族や配偶者であれば、3つの名義が異なっても認められるケースが多いです。反対に別居しているときは、たとえ家族であっても、名義が異なると保険に加入できない可能性があるため注意しましょう。

契約者と記名被保険者が異なるケース

契約者と記名被保険者が異なる契約は、どのような状況下で考えられるのでしょうか。

ここでは実際に起こり得るケースについて確認してみましょう。

親が保険料を払い、主に子どもが運転する場合

学生など、まだ収入が安定していない子どもが主な運転者となるケースでは、親が契約者となり、子どもが記名被保険者となることが考えられます。ただし、親子が同居していることが前提条件です。

夫が保険料を払い、妻が運転する場合

もし妻が専業主婦なら収入はないため、夫が契約者となり保険料を支払うといったケースもあるでしょう。特に子どもがいる家庭だと、妻の方が買い物や子どもの送迎などで頻繁に車を使うこともありますよね。夫が運転するのはたまの休日だけであれば、記名被保険者は妻にするのが望ましいでしょう。

記名被保険者を変更するのはどんなとき?

車の使用状況によっては、記名被保険者を変更しなければならないこともあります。その都度変更手続きをしなければ、万一のとき告知義務違反とみなされる可能性があるため注意が必要です。

以下、実際に想定される3つのケースについて解説いたします。

主に運転する人が変わったとき

契約の車を日常的に使用する人が変わったときは、必ず記名被保険者の変更手続きが必要です。ライフスタイルの変化などに伴い、主に運転する人が変わることはよくあります。うっかり申告漏れが多くなりがちな事項でもあるので、定期的に使用状況の見直しを行いましょう。

 

例1)主に親が運転していたが、免許を取得した子どもに車を譲渡し子どもが主に運転することになった(この場合、同時に車両所有者の名義変更が必要となる)

例2)夫が通勤に車を使用していたが、子どもが産まれたのをきっかけに日常的に妻が車を使うようになった

 

なお、家族内において誰が一番車を使うとは一概に言えないこともあるかもしれません。

そのようなときには保険会社に相談した上で、年齢や免許証の色などの条件が良い人を記名被保険者にすると良いでしょう。

記名被保険者が亡くなったとき

記名被保険者が亡くなった場合も名義変更の手続きが必要です。等級をそのまま同居の家族が引き継ぐこともできます。

もしくは記名被保険者が亡くなったことにより、車を運転する人がいなくなった場合には、解約手続きが必要です。

 

ただ「中断証明書」を発行しておけば、10年間等級を維持できる点には注目しておきたいところ。

通常、任意保険を解約すると、次に保険に加入する機会があった場合に、以前の等級とは関係なくまた6等級からのスタートとなります。中断証明書は、条件を満たせば保険を解約した段階での等級を、最大で10年間維持できる役割を持つ書類です。なんらかの理由で一時的に車を手放したときなど、契約中の保険会社に依頼すると無料で発行手続きが行えます。

 

今すぐには車を使う予定が無くても、将来運転する可能性のある配偶者や同居の親族に等級を引き継いでもらうことができます。

等級が低いほど保険料は割高となってしまうため、等級がある程度高い保険契約であればその分メリットも大きくなるでしょう。

例えば「いずれ子どもが免許を取得したときに、亡くなった親の等級を引き継がせたい」といったケースでは、解約ではなく中断の手続きをしておくと、将来子どもが支払う任意保険料が割安になります。

別居することになったとき

契約者と記名被保険者が別居することになったときにも注意が必要です。親子で考えられるのは、「子どもが独立する」といったケース。

別居しても未婚であれば任意保険の補償の対象に加えることは可能ですが、別居によって子どもはほとんど運転しなくなったといった場合には、記名被保険者を親に変更します。

 

その際、別居した子どもが自分の車を持ったなどの理由で親の車を運転することがなくなるようであれば、「運転者限定特約」や「年齢条件」といった補償範囲の見直しも忘れずに行いましょう。

記名被保険者を変更する際の注意点

記名被保険者の変更時にはいくつか注意すべき点があります。

ここでは、記名被保険者を変更する際の注意点について、確認していきましょう。

告知義務違反に注意

日常的に車を運転する人が変わるというのは、ライフスタイルの変化に伴いよく起こり得ることです。しかし、例えば「妻が日常的に運転することになったが、夫の方が条件が良く保険料が割安になるから」といった理由で変更手続きをせずにいたとします。

 

こうした行為を「告知義務違反」と言い、告知義務違反が発覚すると補償を受けられないだけでなく、契約解除などといったペナルティを科される可能性があるため注意しましょう。

補償の範囲に注意

記名被保険者が変わると年齢条件や運転者限定特約など、補償の範囲も変更になる可能性が高いです。

記名被保険者を変更する際には、あわせて契約内容を確認し、必要があれば補償の範囲も忘れずに見直ししましょう。

等級の引き継ぎに注意

例えば親から子どもに対して車と保険をセットで譲渡する場合、等級の引き継ぎは別居するとできなくなってしまう点に注意が必要です。

 

等級の引き継ぎができるのは、あくまでも「配偶者または同居の親族のみ」となっています。等級の引継ぎを考えている人は、子どもと同居している間に変更手続きを済ませましょう。

なお、住民票の住所を変えなければ大丈夫ということではなく、保険の場合は実態で判断されるため、その点も勘違いしないよう注意してください。

まとめ

今回は任意保険の記名被保険者について、契約者との違いや変更時の注意点を詳しく解説しました。

契約者と記名被保険者の違いを理解して、契約の内容に誤りがないように注意しましょう。

契約内容と事実の相違が発覚すると「告知義務違反」とみなされ、保険会社からのペナルティを受けることにもなりかねません。せっかくの保険も補償が受けられなければ無意味となるので、車の使用状況などは定期的に見直しを行うことをおすすめします。

 

不明点があるときは、保険会社に問い合わせて相談してみると良いでしょう。

契約内容をしっかりと理解した上で、間違いのないよう正しく任意保険に加入して、万一に備えてくださいね。

車両保険とは?補償内容や必要性をわかりやすく解説

自動車保険への加入を検討するとき、車両保険を付帯すべきか迷う方は少なくありません。

車両保険の保険料は、自動車保険に付帯できる補償のなかでも比較的高額です。

 

余分な保険料の支払いを防ぐためには、補償が適用される範囲や支払われる保険金の決まり方などを把握することが大切です。

今回は、車両保険の補償内容や必要性、保険料を抑えるポイントなどを分かりやすく解説します。

最後まで読んでいただくと、車両保険に加入すべきか判断しやすくなるため、ぜひご一読ください。

車両保険とは何かわかりやすく解説

車両保険とは、任意加入の自動車保険に付帯できる補償の1つです。

車両保険を付帯すると、衝突や接触などの事故で車が損傷したときに保険金が支払われるため、修理費用や買い換え費用などをカバーできます。

車両保険の補償が適用される事故の例は、以下の通りです。

 

  • 対向車と衝突して自身の運転する車が損傷した
  • ハンドル操作を誤って電柱に激突した
  • 豪雨による洪水で車が水没した など

 

また、車両本体だけでなく、ETCの車載器や車内に固定されたカーナビなどの装備品が負った損害も補償の対象です。

車両保険の種類

車両保険には、自損事故や自転車との衝突事故などを幅広く補償する「一般タイプ」と、事故の相手の車両がいるときを補償する「エコノミータイプ(車対車+A)」があります。

一般タイプとエコノミータイプについて、補償が適用される範囲はそれぞれ以下の通りです。

 

一般タイプ エコノミータイプ
他の車との衝突
盗難
落書きなどのいたずら
台風や洪水などの自然災害
火災・爆発
自損事故 ×
当て逃げ ×
地震・津波・噴火 × ×

※上記は車両保険の一般的な補償範囲を記載したものであり、実際の補償範囲は、契約内容や事故の状況などで異なります。

 

エコノミータイプは、自損事故や相手がわからない事故などが補償の対象外です。

補償範囲が狭いぶん、エコノミータイプのほうが一般タイプよりも保険料は安くなります。

 

一方で、一般タイプとエコノミータイプのどちらに加入していても、台風や洪水などで負った車両の損害は補償されます。

しかし、地震や津波、噴火などで負った車両の損害は、一般タイプとエコノミータイプのどちらを選んでも補償されません。

車両保険の付帯を検討すべき理由

「交通事故を起こしたときは、相手から支払ってもらった賠償金で車を修理できるため車両保険は必要ない」と考えている方も多いのではないでしょうか?

たしかに、事故相手が自動車保険に加入していれば、保険会社からの保険金で賠償金を支払ってもらえる可能性があります。

 

しかし、相手方から支払われる賠償金は過失割合に応じて相殺されるため、自動車の修理費用のすべてを賄えるとは限りません。

例えば、車の損害額が200万円、過失割合が「自分50:相手50」であった場合、相手が加入する自動車保険から補償される金額は100万円のみです。

残りの100万円は、ご自身の貯蓄や資産などでカバーしなければなりません。

 

車両保険に加入していれば、ご自身の過失割合分である残りの100万円を保険金でカバーできます。

また、自損事故や自然災害、当て逃げなどで車が損害を負った場合、一般タイプの車両保険に加入していなければ、修理費用や買い換え費用は全額自己負担となるでしょう。

 

このように、車が損害を負ったときに多額の修理費用や買い換え費用が発生すると想定される場合は、車両保険に加入しておくと安心です。

車両保険の付帯率(加入率)

では、自動車を所有している人のうち、車両保険を付帯している割合はどれくらいなのでしょうか。

損害保険料算出機構の調査によると、2020年3月末時点における車両保険の加入率の全国平均は、以下の通りです。

 

  • 自家用普通自動車(3ナンバー車):62.3%
  • 自家用小型自動車(5ナンバー車・7ナンバー車):51.9%
  • 軽四輪乗用車:48.0%

※出典:損害保険料算出機構「自動車保険の概況」

このように、約5〜6割の自動車が車両保険に加入して、事故が発生したときの損害に備えているようです。

車両保険の保険金額の決まり方

車両保険に加入する際は、保険金の支払上限額である「保険金額」を設定します。

車両保険の保険金額は、基本的に車の時価相当額に対応しており、自動車の用途や車種、車名、年式などをもとに各保険会社が決めています。

 

初度登録から年数が経過するごとに、経年劣化によって失われたと考えられる価値の分だけ、車両保険の保険金額は減少していく仕組みです。

中古車の場合、車両保険の保険金額が購入金額よりも低くなるケースが少なくありません。

たとえプレミアが付くような人気車種であっても、初度登録から一定期間が経過している車は保険金額が低く設定されことがあります。

「全損」と「分損」で保険金の計算方法が異なる

車の修理費用が契約時に決めた保険金額を上回る場合や、車両が盗難にあった場合は「全損」、修理費用が保険金額未満である場合は「分損」となります。

支払われる保険金の決まり方は、 全損と分損で以下のように異なります。

 

  • 全損:支払われる保険金=保険金額
  • 分損:支払われる保険金=損害額−免責金額

※保険金額が上限

 

免責金額は、損害額のうち自己負担する金額です。

例えば、車の修理費用が30万円、免責金額が5万円であった場合、保険会社から支払われる保険金は25万円(30万円−5万円)となります。 

免責金額の決め方

車両保険の免責金額は「1回目5万円、2回目以降10万円」のように、1回目の事故と2回目以降の事故で適用される金額をそれぞれ決めるのが一般的です。 

 

一方で「1回目10万円、2回目以降10万円」「1回目0万円、2回目以降0万円」など、1回目と2回目以降の免責金額を同じ額に設定することもあります。

 

また契約によっては「免責ゼロ特約」が付帯される場合もあります。

免責ゼロ特約とは、所定の要件を満たすと1回目の事故にかぎり車両保険の免責金額がゼロ円になる特約です。

例えば、免責金額を「1回目5万円、2回目以降10万円」に設定していた場合、免責ゼロ特約が適用されると、1回目の事故が発生したときの免責金額が5万円ではなく0円になります。

車両保険の保険料

車両保険の保険料は、対人賠償保険や対物賠償保険と同じく「ノンフリート等級」を用いて計算されます。

ノンフリート等級とは、保険料に適用される割増率や割引率の等級区分のことです。

 

初めて自動車保険を契約したときは基本的に6等級※からスタートし、1年間、無事故であれば翌年は等級が1つ上がります。※複数台所有していた場合は7等級からのスタート

ノンフリート等級が4〜20等級であると、所定の割引率が適用され支払う保険料が安くなり、等級の数値が上がるほど割引率も高くなっていく仕組みです。 

一方で1〜3等級になると、保険料に所定の割増率が適用されます。

▶自動車保険のノンフリート等級について詳しく知りたい方はこちら

車両保険の保険金を請求すると翌年の等級がダウンする

車両保険を使うと翌年の保険料を計算する際に、ノンフリート等級が1等級または3等級ダウンし保険料が割高になります。

ダウンする等級は、以下の通り事故の種類によって決まります。

 

事故の例
3等級ダウン事故 ・他人の車との衝突事故(当て逃げを含む)

・自分が運転する車を電柱にぶつけるなどの自損事故

1等級ダウン事故 ・車両の盗難

・台風や洪水などの自然災害

・落書きなどのいたずら

・飛び石

 

例えば、他人の車と衝突して自分が運転する車が損傷し、車両保険の保険金を請求した場合は3等級ダウン事故となります。

 

ノンフリート等級が14等級であった場合、翌年は11等級にダウンして適用される割引率が減少するため、支払う保険料は増えてしまうでしょう。

なお車両保険だけでなく、対人賠償保険や対物賠償保険などノンフリート等級を用いて保険料が計算されるすべての補償に影響が出ます。

事故によって車が負った損害が小規模であり、保険金を請求することで翌年の保険料が大幅に増えるのであれば、車を自費で修理するのも方法でしょう。

 

ただし、車両保険に「無過失事故に関する特約」が付いていると、追突事故のようにご自身に過失がない事故については、保険金を請求しても翌年度の等級は下がりません。

車両保険の必要性を判断するポイント

では、車両保険はどのような方にとって必要性が高いのでしょうか?

ここでは、車両保険の必要性を判断する際のポイントを4点解説します。

車の時価

車両保険で支払われる保険金は、原則として車の時価が上限となります。 

例えば、車の時価が高い新車の場合は、事故によって車が損害を負っても、車両保険の保険金で修理費用や買い換え費用をカバーしやすいです。

特に高級車の場合は、事故に遭ったときの修理費用や買い換え費用も高額になりやすいため、車両保険を付帯しておくと安心でしょう。

 

一方で、初度登録から10年以上経過している中古車は、車両保険に加入しても事故で車が損害を負ったときに十分な保険金が支払われないかもしれません。

車両保険を付帯すると保険料が増えるため、万一の場合に支払われる保険金の額を確認のうえ必要性を判断することが大切です。

車が損害を負うリスク

ご自身の通勤や子どもの送り迎えなどで日常的に車を使用している方は、運転する機会が増えるため、車が損害を負うリスクは高くなるでしょう。

また日常的に使用している車が事故で使えなくなると、生活に支障をきたしかねません。

そのため生活に車が必要不可欠な方にとって、車両保険の必要性は高いといえます

 

車両保険に加入すると、事故にあったとき保険金で修理費用や買い換え費用を賄いやすくなるため、日常生活への支障を最小限にできるでしょう。

ただし車を運転する頻度が少ないからといって、自動車保険が不要であるとは限りません。

例えば、運転技術に不安があり交通事故が心配な方は、車両保険に加入しておくと安心でしょう。

他にも、豪雨や台風などが発生したときに洪水や冠水などが起こりやすいエリアに住んでいる方は、車両保険に加入して備えるのも方法です。

ローン残債の有無

自動車ローンの返済中である方にとって、車両保険の必要性は高いといえるでしょう。

交通事故で車が全損になると、ローンの返済義務だけが残る恐れがあるためです。

 

2021年12月現在、性能の向上や装備の充実により、軽自動車であっても200万円を超えることがあるため、自動車ローンを組んで車を購入する方は少なくありません。

車両保険に加入していれば、事故で車が損害を負って多額のローンが残ってしまっても、保険金で完済できる可能性があります。

車両保険の保険料を抑えるポイント

「車両保険に加入したいけれども保険料が家計を圧迫する事態は避けたい」と考えている方も多いでしょう。

そこでここでは、車両保険に付帯する際の保険料を抑える方法について解説していきます。

エコノミータイプに加入する

エコノミータイプの保険料は、一般タイプよりも安く設定されています。

自損事故や当て逃げなどがカバーされなくても、車との衝突事故で負った自車の損害に備えるだけで良いのであれば、エコノミータイプを選ぶと良いでしょう。

 

ただし、自損事故や当て逃げなどのリスクにも備えたいのであれば、エコノミータイプではなく一般タイプを選ぶことが大切です。

免責金額を高くする

免責金額を高く設定すると、車両保険の保険料を安くできます。

例えば、免責金額を「1回目0万円、2回目以降5万円」とするよりも「1回目10万円、2回目以降10万円」としたほうが、保険料は安くなります。

 

5万円や10万円など、一定の金額までなら貯蓄から修理費用をまかなえるのであれば、免責金額を高く設定すると良いでしょう。

複数の保険会社を検討する

保険会社によって、自動車保険料の計算方法が異なります。

 

また、インターネットを通じて加入できる「ダイレクト型」の自動車保険は、保険ショップや自動車ディーラーなどで加入できる自動車保険よりも保険料が割安です。

そのため車両保険を付帯するかどうかにかかわらず、自動車保険を選ぶ際は複数の見積もりを取り寄せたうえで、保険料を比較して選ぶと良いでしょう。

 

ただし、保険会社によって事故が発生したときの対応可能時間や、ロードサービスの内容などが異なります。

保険料だけでなく、事故が発生したときのサービス内容も比較したうえで、加入する自動車保険を選ぶことが大切です。

まとめ

車両保険に加入すると、車が損害を負ったときに保険金が支払われるため、修理費用や買い換え費用を賄いやすくなります。

「新車や高級車を購入した」「日常的に車を使用している」「自動車ローンを返済中である」などに当てはまる方にとって、車両保険の必要性は高いと考えられます。

 

一方で、初度登録から年数が経過している中古車に乗っている場合は、車両保険に加入しても損害をカバーできるだけの保険金を受け取れないかもしれません。

乗っている車や車が損傷するリスクなどをもとに、ご自身にとって車両保険が必要かどうかを考えましょう。

また、車両保険には「一般タイプ」と「エコノミータイプ」があり、補償が適用される範囲や支払う保険料などが異なるため、内容や違いをよく理解したうえで選ぶことが大切です。

自動車保険の等級とは?知っておきたい等級の上げ方、保険料の決まり方

「自動車保険の等級を上げるには、どうすればいいんだろう?」

「自動車保険の等級がそもそも何なのか、よく分かっていない……」

と思ったことはありませんか?

自動車保険では等級が上がれば、基本的に保険料は安くなっていきます。

ただ、自動車保険の等級の仕組みをよく知らないまま何となく入っていると、余計な保険料を払っている可能性があります。これから自動車保険に加入する方は、もしかしたら高い等級からスタートして保険料を節約できるかもしれません。

そこで本記事では、自動車保険の等級の仕組みや、等級の上げ方を解説します。

自動車保険の等級について理解し、保険料を安くしましょう。

自動車保険の等級とは

自動車保険の等級とは、一般的に「ノンフリート等級制度」のことです。ノンフリート等級制度では、1等級から20等級に区分され、等級が上がると保険料は安くなるシステム。

等級によって、保険料の割引率や割増率が決まります。

所有する車が9台以下の場合はノンフリート等級制度、10台以上になると「フリート等級制度」を適用します。

自動車保険の等級の決まり方

自動車保険の等級は、1年間に保険を使った事故の有無によって決まります。事故に遭わず保険を使わなければ、次年度に等級が上がる仕組みです。初めて自動車保険を契約する場合、6等級からスタートします。

たとえば、初めて自動車保険を契約して1年間事故がなければ、次の年は7等級。その後も事故がなく保険を使わなければ、8等級、9等級……と1年おきに昇級します。

 

等級の決定に伴い、保険料も決まります。保険料の指標となるのが、事故有係数無事故係数

事故有係数・無事故係数とは、保険料の割引率を計算する際に使う値です。それぞれの等級では、事故があった場合と無事故の場合で、割引率が異なります。6等級以下は、事故の有無にかかわらず、保険料は同額です。

自動車保険の等級を上げるには

自動車保険の等級を上げる方法は、主に以下の通りです。

  1. 安全運転を心がける
  2. 本当に保険の適用が必要か考える
  3. 複数所有新規を利用する

それぞれ解説します。

1.安全運転を心がける

等級を上げる方法の1つ目は、安全運転を心がけること。安全運転を意識して事故を起こさなければ、翌年に等級は上がります。等級が上がるほど保険料の割引率も上がるので、地道ですが確実な方法です。

2.本当に保険の適用が必要か考える

等級を上げる方法の2つ目は、本当に保険の適用が必要か考えることです。事故を起こしただけでは、等級は下がりません。自動車保険の請求をするか否かで等級が変わります。

以下を計算して比べ、判断しましょう。

  • 等級が下がってどのくらい保険料が上がるのか
  • ケガの治療費や車の修理代はどのくらいかかるのか

もし、自動車保険の請求をしなくても事故の対応ができそうなら、保険金の請求をしないのも手です。

3.複数所有新規を利用する

等級を上げる方法の3つ目は、複数所有新規を利用することです。セカンドカー割引とも言います。

複数所有新規では、以下の条件を満たした場合、2台目以降の車は7等級からスタートできます。

  • 1台目の車が11等級以上である
  • 1台目と2台目ともに、以下のいずれかに該当(自家用8車種)
    • 自家用普通自動車
    • 自家用小型乗用車
    • 自家用軽四輪乗用車
    • 自家用小型貨物車
    • 自家用軽四輪貨物車
    • 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン以下)
    • 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン超2トン以下)
    • 特殊用途自動車(例:キャンピングカー)
  • 記名被保険者が以下の場合
    • 1台目と同一※(A)とする
    • (A)の配偶者※(B)とする
    • (A)もしくは(B)の同居の家族
  • 車両所有者が以下の場合
    • 1台目の記名被保険者※(A)とする
    • (A)の配偶者※(B)とする
    • (A)もしくは(B)の同居の家族
    • 1台目の車両保有者

 

たとえば、1台目の車を夫が持っていて、妻の車に複数所有新規を適用する場合。複数所有新規を適用して、妻の車は7等級からスタートできます。

一方、複数所有新規が使えない例としては、家族と離れて暮らす子どもの場合。この場合、車両所有者の子どもが一緒に住んでいないため「(A)もしくは(B)の同居の家族」ではありません。よって、複数所有新規として契約することは不可能です。

 

ちなみに、別居していても配偶者であれば、複数所有新規を利用できます。

条件に該当するのであれば、複数所有新規を適用して保険料を下げましょう。

事故で自動車保険を使ったとき、等級はどうなる?

万が一事故に遭ってしまい、自動車保険を使ったら、等級は下がります。自動車保険では、事故を以下の3つに分類しています。

  • 3等級ダウン事故
  • 1等級ダウン事故
  • ノーカウント事故

それぞれどんな事故なのか、例を挙げて解説します。

3等級ダウン事故の例

自動車保険を使った場合、ほとんどの事故は3等級ダウン事故に該当します。事故有係数適用期間は3年です。事故有係数適用期間とは、その名の通り事故有係数が適用される期間。等級にはそれぞれ「事故有り」と「無事故」で適用される割引率が異なります。事故有係数を使って保険料を計算される期間が、3等級ダウン事故の場合は3年という意味です。

3等級ダウン事故は、具体的に以下のような場合が該当します。

  • 自分の車を壊した
  • 他人を死傷させた
  • 他人の車や物を壊した
  • 1等級ダウン、もしくはノーカウント事故に該当しない事故を起こした

もし、現在10等級であれば、翌年は7等級になります。

1等級ダウン事故の例

自動車保険を使った場合に1等級ダウンする事故は、被害が自分の車だけの事故です。事故有係数適用期間は1年。

主に以下のような事故が、1等級ダウン事故に該当します。

  • 火災・爆発
  • 盗難や落書き
  • 台風・竜巻・洪水

もし現在10等級であれば、翌年は9等級になります。

ノーカウント事故の例

ノンフリート等級制度では、事故件数として扱わないのがノーカウント事故。保険を使っても無事故の時と同じく、翌年の等級は1つ上がります。ノーカウント事故を複数起こしても、等級には影響しません。事故有係数適用期間もありません。

ノーカウント事故は、具体的に以下が当てはまります。

  • 人身傷害保険事故
  • 搭乗者傷害保険事故
  • 無保険車傷害特約事故

主に、自分や家族がケガをした場合に該当します。

自動車保険の等級の豆知識

自動車保険の等級に関して、知っておきたい豆知識を以下の通りご紹介します。

  • 等級の引継ぎができる
  • 同じ等級でも事故の有無で保険料が変わる

それぞれ解説します。

等級の引継ぎができる

自動車保険の等級は、引継ぐことができます。自分で引継ぐことも、家族に引継ぐことも可能です。

自分で引継ぐ場合は、車の買い替え時や、保険会社の変更時に適用できます。

車を買い替えた際に、自動車保険の対象となる車を変更することを「車両入替」といいます。車両入替の際には、買い替えた車によって保険料の差分を清算しなければなりません。

 

保険会社を変更する場合は、契約期間中に変更するのか、満期日で変更するのかで手続きが異なります。

契約期間中に変更する場合、契約中の保険会社・新しく契約する保険会社、両社で手続きが必要です。

満期で保険会社を変更する場合、前の保険会社への連絡は不要です。ただし、事故を起こして保険を使った場合、他社からの契約変更を受け付けない場合があります。保険会社によって条件が異なるので、満期まで時間があるタイミングで保険会社に相談しましょう。

家族に自動車保険の等級を引継ぐ場合、子どもが車を購入した時や廃車時によく使われます。

 

特に子どもの年齢が若い場合、等級の引継ぎをするとお得です。全年齢補償や21歳以上補償を適用することが多くなりますが、保険料は高く設定されています。車の運転は年齢が若いほど事故のリスクが高いため、自動車保険料も高くなりがちです。

しかし、親の等級を子どもが引継げば、高い等級からスタートできます。その分保険料も安くすることが可能です。よくある流れとしては、子どもが親の等級を引継いでから、親が新規で自動車保険に加入するパターン。トータルで考えれば、保険料が安くなります。

注意点としては、等級の引継ぎは同居していることが前提である点です。進学や就職で子どもが上京して別居している、といった場合には使えません。

 

廃車の際も等級は引継ぎができます。海外赴任・長期の入院などで、しばらく車の運転をしない場合、自動車保険も解約するケースがあります。その際には、中断証明書を発行しておけば、また自動車保険を契約する際に、以前の等級からスタート可能です。

保険会社によって、中断証明書の発行条件や、等級を維持したまま再開する条件が異なります。契約している保険会社に確認してみましょう。

同じ等級でも事故の有無で保険料が変わる

事故の有無で、同じ等級でも保険料が変わり、割引率に10~20%の差が生まれます。

たとえば以下の表を参照すると、同じ12等級でも、11等級の人が1等級上がった場合の割引率は48%。15等級の人が3等級ダウン事故を起こした場合、割引率は27%になります。

 

等級 無事故(割引率) 事故有り(割引率)
11等級 47% 25%
12等級 48% 27%
13等級 49% 29%
14等級 50% 31%
15等級 51% 33%

損害保険料率算出機構「自動車保険参考純率改定説明資料」から抜粋)

事故有係数と無事故係数、どちらが適用されるかで、金額差が大きく開きます。無事故を目指して、安全運転を心がけましょう。

まとめ

この記事では、自動車保険の等級について、主に以下を解説しました。

  • ノンフリート等級制度は20等級に分類される
  • 等級によって自動車保険料が決まる
  • 等級が上がるほど、自動車保険料が安くなる
  • 等級を上げるには、安全運転を意識する

自動車保険の料金は、可能な限り安く抑えたいもの。ご紹介したように、複数所有新規で契約・等級の引継ぎといった方法はあります。しかし、基本的には安全運転を心がけるのが一番です。

事故を起こさないように注意し、コツコツ等級を上げていきましょう。

任意保険とは?車の任意保険と自賠責保険の違いを詳しく解説

車を運転するすべての人が加入を検討してほしい「任意保険」。

しかし、任意保険というだけあって、「加入しなくてもいいのでは?」と考える人もいるのではないでしょうか。

車の保険には「自賠責保険」「任意保険」の2種類があります。自賠責保険は法律で加入が義務付けられているため強制加入となりますが、実は自賠責保険だけでは、いざというときに受けられる補償が足りなくなるのです。

それでは自賠責保険で受けられる補償と任意保険の内容にはどのようなところに違いがあって、どのような補償が足りないのでしょうか。

今回は自動車の任意保険について、自賠責保険との違いと任意保険に加入すべき理由を詳しく解説していきます。任意保険への加入を悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。

任意保険とは

一般的に任意保険は、車を保有するすべての人に加入が推奨されている自動車保険のことを指します。任意保険のなかには「自転車保険」や「バイク保険」なども挙げられ、それぞれに適した補償が提供されています。

もちろん車の任意保険は、自動車事故の補償に適した保険です。車で事故を起こした際、相手のケガなどは自賠責保険からも補償が受けられますが、補償範囲や補償額には制限があるため、補償を上乗せできる任意保険への加入が推奨されています。

任意とはいえ、自動車保険の加入率は全国で「88.3%(※)」にものぼり、およそ9割のドライバーが任意保険に加入していることが分かります。

任意保険に加入していないと、事故による損害賠償金の支払いなどができず、相手側に迷惑をかけることにもなりかねません。もちろん、自分や家族など大切な人を守るためにも必要となるので、もはや「任意保険に入らない」という選択肢はないと考えたほうが良いでしょう。

(※)対人賠償の普及率、共済の加入率も含む
参考:損害保険料算出機構「2020年3月末 自動車保険の概況」より

任意保険の補償内容

任意保険の補償内容は「相手への補償」「自分または同乗者への補償」「自分の車の補償」の大きく3つに分けられます。

ここでは、それぞれの補償内容について詳しく解説していきます。おすすめの補償金額も合わせてチェックしていきましょう。

賠償責任保険(相手への補償)

賠償責任保険には、「対人賠償」「対物賠償」の2つが挙げられます。

どちらも相手側に対する賠償責任として、大変重要な役割を果たしてくれる保険です。

対人賠償保険

対人賠償保険では車の事故によって、相手を死亡または負傷させ、法律上の賠償責任を負った場合に保険金が支払われます。

対人賠償は治療費や慰謝料などが高額となるケースが多いため、保険金額は「無制限」とするのがおすすめです。

対物賠償保険

対物賠償は、相手側の車や所有物などを損傷してしまった場合の損害賠償保険です。

必ずしも相手がいる事故に限らず、例えば単独事故により公共物を破損してしまった場合にも、対物賠償保険から補償が受けられます。こちらも万が一に備えて保険金額は「無制限」をおすすめします。

傷害保険(自分または同乗者への補償)

傷害保険は主に自分のために用意する補償です。全部で4種類あり、それぞれ受けられる補償の内容が異なります。基本補償に含まれるケースとそうでないケースがあるため、契約前に補償内容を確認しましょう。

人身傷害保険

自分や同乗者が死亡またはケガを負った場合に、治療費や休業損害などの補償が受けられる保険です。原因は問わず自動車事故による損害であれば、過失割合に関係なく保険金が支払われます。

同乗者に誰を想定するのか、また死亡とケガ両方に備えるかなど、想定する使い道によっても保険金額の設定の仕方は異なります。一般的には3,000万円に設定する人が多く、無制限まで幅広く保険金額を設定できますが、別途死亡保険に加入している人は、死亡時の補償内容と被らないように注意しましょう。

搭乗者傷害保険

搭乗者傷害では、契約中の車に同乗していた人が死亡またはケガを負った場合に補償が受けられます。

人身傷害保険との違いは、「保険金が支払われるタイミングが異なる」といった点です。

搭乗者保険は入院または通院の日数が5日を超えた時点で一定額の保険金が支払われるため、人身傷害保険よりも早く保険金が受け取れるといったメリットがあります。

 

また人身傷害の場合、自分や家族が歩行中に車の事故に巻き込まれたときにも補償がおりますが、搭乗者傷害は契約車を運転中の事故のみ補償が受けられるといった点にも違いがあります。

 

人身傷害保険と搭乗者傷害保険の2つは、補償内容が重複する可能性がある上に、補償を手厚くしすぎると保険料が割高となる傾向にあるのが特徴です。それぞれ必要な補償のみを考慮したうえで慎重に選びましょう。

自損事故保険

自損事故=相手がいない単独事故の場合、事故の現場によっては対物賠償保険からの補償が受けられません。

たとえば、自宅の車庫に車をぶつけたときなど、単独事故により自分の所有物が損傷した場合には、自損事故保険から保険金が受け取れます。

 

自損事故保険は保険会社によって、契約に自動で付帯されるケースが多い補償です。

自分が加入する保険には自動付帯されるかどうか、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。

無保険車傷害保険

万が一事故を起こした相手が任意保険に加入していなかった場合には、「無保険車傷害保険」から保険金が支払われます。

多くのドライバーが保険に加入しているとはいえ、任意保険の未加入車がいるのも事実。また、ひき逃げなど相手が不明な事故の場合にも補償が受けられるため、加入しておくと安心です。

こちらも基本の補償に自動付帯されているケースがほとんどですが、契約前に補償内容を確認しておきましょう。

車両保険(車の補償)

車両保険に加入すれば自損・他損を問わず、自分の車が損傷した場合に補償が受けられます。ただし車両保険を付帯すると一気に保険料が高くなるので、付けるか付けないかの見極めは重要だといえるでしょう。

 

「車両保険はつけたいけど、保険料は抑えたい」という人は免責金額を設定するのがおすすめです。事故により車に修理の必要性が生じた場合、あらかじめ設定した免責金額までは自腹で支払うことになりますが、その分保険料を抑えられるのが特徴です。

 

また車両保険に加入したからといって、必ずしも全額補償が受けられるとは限りません。補償される金額は車の時価額が上限となるため、場合によっては修理費用が保険金額で賄えない可能性もあります。

車両保険を使うことで等級も下がり、翌年以降の保険料が上がることも考えられるため、そうしたことも踏まえて「車両保険に加入するか否か」を検討しましょう。

その他の特約

任意保険には基本的な補償以外にもさまざまな特約があり、補償をより充実させることができます。ここではよくある特約について見ていきましょう。

弁護士費用特約

「任意保険に加入していれば、事故時の対応はすべて保険会社が行ってくれる」と思っている人は要注意です。実は、過失割合が10:0のいわゆるもらい事故の場合、自分が加入している保険会社はその事故に対して、一切介入することができません。

そうした場合には弁護士費用特約を利用すれば、弁護士に示談交渉を依頼することができます。

相手側より提示された賠償金額が正当なものかどうかの判断が難しく、トラブルに発展することもあるでしょう。不要なトラブルを避けるためにも弁護士費用特約はぜひ加入しておきたいおすすめの特約です。

ロードサービス特約

ロードサービス特約をつければ、車のトラブル時にロードサービスを受けることができます。

保険会社によっては無料で自動付帯されることもありますが、受けられるロードサービスの内容はそれぞれ異なるため、契約前に補償内容をしっかりと確認しておきましょう。

自賠責保険との違い

任意保険で受けられる補償の内容が分かったところで、続いて自賠責保険との違いについてチェックしていきましょう。

自賠責保険と任意保険の違いには「補償の範囲」「補償金額」が挙げられます。

自賠責保険の補償範囲

自賠責保険の補償範囲は、「相手側に対するケガや死亡または後遺障害」のみです。

簡単にいうと「人に対する補償」しか受けられません。また、自分に対する補償は一切ない点も自賠責保険の特徴です。

たとえば相手の車や自転車など、モノに対する補償も受けられないため、任意保険と比べて補償範囲が大きく制限されていることがいえます。

自賠責保険の補償額

続いて、補償額について見ていきましょう。

自賠責保険では、「傷害」「後遺障害」「死亡」の3つのケースごとに、受けられる補償内容が異なります。

保険金 補償内容
傷害の場合 被害者1名につき120万円まで 治療費、通院交通費、診断書の費用、休業損害、慰謝料など
後遺障害の場合 障害の程度により75~4,000万円まで 逸失利益、慰謝料など
死亡の場合 被害者1名につき3,000万円まで 葬儀費、逸失利益、慰謝料など

参考:国土交通省「自賠責保険ポータルサイト」より

このように、自賠責保険の補償範囲と補償額は限定されていることから、自賠責だけでは補償が足りないことが懸念されるでしょう。

つまり、任意保険への加入は必須だといえます。

 

任意保険の保険料は高額になることも多いため、加入をためらう人がいるかもしれません。そんな人は任意保険の賢い選び方を知っておくと、保険料を抑えつつ、いざというときの補償を充実させることができますよ。

任意保険の選び方のポイント

任意保険の賢い選び方にはいくつかポイントが挙げられます。ここでは、任意保険の選び方のポイントを解説していきます。保険料を抑えたいと考えている人も参考にしてください。

代理店型かダイレクト型か

任意保険には「代理店型」「ダイレクト型」の2種類があります。

代理店型は、保険会社との契約を仲介する担当者がおり、補償内容について対面で相談ができたり、担当者によっては事故後の保険会社とのやり取りを代行してくれたりなど、手厚くサポートしてくれるのが特徴です。

 

一方でダイレクト型は、保険会社と直接契約を交わすため仲介手数料が不要となる分、保険料は大幅に抑えられる傾向にあります。

最近では、電話やメールで不明点について詳しく教えてくれるなど、サポート体制が充実している保険会社も多く、ダイレクト型でも安心して加入できるといえるでしょう。

 

ネットからの加入で割引が受けられる保険会社も多いため、少しでも保険料を抑えたい人は、ダイレクト型の自動車保険を選ぶのがおすすめです。

どこまで補償をつけるか

任意保険は比較的自由に補償内容を設定できるため、補償を手厚くしようと思えばいくらでもできるのがメリットにもデメリットにもなり得ます。

自分に必要な補償の内容をしっかりと理解して契約すれば、無駄な補償を削ぎ落とすことができ、結果として保険料を抑えることができます。

 

「車両保険は必要か」「運転者を限定するか」など、保険料を抑えるポイントを把握して、自分に合った補償を選びましょう。

保険料の支払いは苦にならないか

一般的に月払いよりも年払いのほうが保険料は割安になります。しかし、年払いでまとめて保険料を支払うことによって家計を圧迫するのは避けたいところです。

自分に合った方法で、無理なく保険料の支払いをおこなうことが大事だといえます。

まとめ

今回は自動車の任意保険について、自賠責保険との違いと任意保険に加入すべき理由を詳しく解説しました。

自賠責保険だけでは補償内容が確実に足りないことがいえるため、車を保有するドライバーのみなさんは、ぜひ任意保険への加入を検討してください。

 

任意保険は補償内容をはじめ、年齢や等級など契約者の条件によっても保険料が大きく変動します。

費用面から任意保険への加入を躊躇している人は、「ダイレクト型保険を検討する」「補償を限定する」「無理のない支払い方法を選択する」などの方法で、保険料を抑えたり負担を軽減させたりすることを考えてみましょう。

また、同じ補償内容でも保険会社ごとに保険料率が異なるため、複数の保険会社からの見積もりを取って比較することをおすすめします。

賢く保険料を抑えて任意保険に加入し、安心のカーライフを送りましょう。