自動車保険に弁護士費用特約は不要?特徴と保険料を解説

「自動車保険に弁護士費用特約は付帯したほうがいいの?」と思ったことはありませんか?

本記事では、弁護士費用特約の概要をまとめました。弁護士費用特約の内容を理解し、自分に必要なのか判断するためにも、ぜひ最後までご覧ください。

弁護士費用特約とは

弁護士費用特約とは、弁護士への依頼費用を補償する特約です。交通事故で被害者になった際に利用でき、弁護士へ損害賠償請求を依頼する場合や、法律相談をしたい場合などに使えます。

「損害賠償請求なんて、弁護士じゃなくて保険会社にやってもらえばいいんじゃない?」

このように考えた方もいるかもしれませんが、もらい事故では、保険会社に示談交渉を依頼できません。なぜなら弁護士法人ではない保険会社が法律事務を実施すれば、以下の弁護士法第72条に抵触するためです。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)

 

第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。

(引用:弁護士法

もらい事故で被害者になったときは、保険会社ではなく弁護士へ依頼します。この場合に利用できるのが弁護士費用特約であり、弁護士に示談交渉を依頼できます。

このように、弁護士費用特約に加入していれば、弁護士へ依頼する際の自己負担額を軽減することが可能です。

弁護士費用特約を付帯する3つのメリット

ここからは、弁護士費用特約を付帯するメリットを紹介します。弁護士費用特約のメリットは下記の3つです。

  1. 慰謝料の増額が期待できる
  2. もらい事故でも弁護士に示談交渉を依頼できる
  3. 事故後の手続きや相手とのトラブル対応も任せられる

それぞれ解説します。

1.慰謝料の増額が期待できる

1つ目のメリットは、弁護士へ依頼すると慰謝料をより多く受け取れる可能性があることです。理由として、下記2つの背景が挙げられます。

  1. 提示される示談金は相場よりも安いことが多い
  2. 加害者側の示談相手(保険会社)は交渉に慣れている

加害者サイドの保険会社から提示される金額は、妥当な示談金よりも低い場合があります。保険会社は自社で設けている水準に従って、慰謝料を提示するためです。

しかし、示談交渉に慣れていなければ、相場がどのくらいなのかを判断することは困難です。プロである弁護士に依頼すれば、示談金の妥当な金額を把握したうえで、適切な金額の交渉が望めます。

また、示談相手である保険会社は示談交渉に慣れており、示談金の増額を交渉しようとしても反論してくるかもしれません。この場合も示談交渉を弁護士に任せれば、保険会社は裁判に発展することを懸念して、交渉を受け入れる可能性があります。

なお、弁護士費用特約を使えば依頼費用はカバー可能なことが多く、損しにくいといえます。

2.もらい事故でも弁護士に示談交渉を依頼できる

もらい事故の場合、弁護士法により保険会社は示談交渉ができません。もらい事故では、被害者に過失はないと見なされるため、被害者は慰謝料の支払いが不要です。そのため、弁護士法72条により、保険会社が被害者の代理として示談交渉をすることができません。

しかし、弁護士へ示談交渉を依頼することは可能です。弁護士費用特約を付帯している場合は依頼費用が補償されるので、依頼費用の負担を下げられると言えます。

3.事故後の手続きや相手とのトラブル対応も任せられる

交通事故の後は、以下のようにさまざまな手続きが必要です。

  • 示談交渉
  • 休業損害の申請
  • 労災保険への給付金の請求
  • 後遺障害等級認定の申請

上記の手続きが初めての場合、申請に手間取りやすいうえに、事故のケガで思うように身体が動かないことも考えられます。

加えて、以下のようなトラブルの発生も予想されます。

  • 治療費支払いの打ち切り
  • 過失割合の見積もりが不適切

弁護士へ依頼した場合は、挙げたような手続きやトラブルに対応してもらえることがあります。スムーズな解決を望むのであれば、弁護士への依頼がおすすめです。

▶自動車事故を起こした時の保険請求手続きの詳しい流れはこちら

弁護士費用特約を付帯する3つのデメリット

ここまで、弁護士費用特約や弁護士へ依頼するメリットをお伝えしました。以降では弁護士費用特約を付帯するデメリットを3つお伝えします。

  1. 年間で数千円の保険料がかかる
  2. 家族内で補償の重複が発生する恐れがある
  3. 事故後に特約を付帯しても補償されない

それぞれ順番に解説します。

1.年間で数千円の保険料がかかる

1つ目のデメリットは、年間で数千円の保険料が発生することです。保険料は会社によって異なりますが、およそ2,000~4,000円のコストがかかります。

ただ、事故後に回収できる金額を考えたとき、年間で数千円ほどの保険料ならば支払ったほうが安心できるかもしれません。

また、条件に合致している場合は、家族も弁護士費用特約の補償の対象です。車を運転する人が多い家庭や運転する頻度が高い場合は、弁護士費用特約の付帯を考えてみることをおすすめします。

2.家族内で補償の重複が発生する恐れがある

補償の重複とは、補償の範囲が重複してしまうことを意味し、複数の保険に加入している場合に起こり得ます。

一例として、次のケースで考えてみましょう。

  • 夫婦で別の保険に加入
  • 夫と妻は弁護士費用特約をそれぞれの保険で付帯
  • どちらの保険も家族を補償

上記の場合、どちらの保険も夫と妻双方の事故をカバーするので、補償の重複が発生しています。

加入する前に、家族が加入している保険で弁護士費用特約を付帯していないか、チェックしましょう。

3.事故後に特約を付帯しても補償されない

事故の後に弁護士費用特約を付帯しても補償は受けられない点も、注意が必要です。

事故が発生し、「示談金が安いから弁護士に依頼したい」「示談交渉に自信がない」などと感じても、弁護士費用特約に加入して補償を受けることはできません。

特約を利用して、少しでも負担を抑えつつ弁護士へ依頼したいなら、早めに付帯することをおすすめします。

弁護士費用特約を活用できる場面

実際に弁護士費用特約を利用できるケースとして、具体的に下記の場面が挙げられます。

  • もらい事故で被害者になった場合
  • 保険会社の提示してきた金額に納得できない場合
  • 相手が無保険で交渉に応じようとしない場合

もらい事故の被害者は、保険会社の示談交渉サービスを利用できません。そのため、専門家を頼りたいのであれば、弁護士に依頼することになります。

また、保険会社が提示した金額に納得がいかない場合も、弁護士に依頼することで、示談金額の増額が期待できます。

事故相手が任意保険に加入していない場合も、弁護士は頼もしい存在です。事故相手が無保険のときは、相手方のバックに保険会社がいないため、素人同士で示談交渉を進めます。

しかし、お互い示談金額の相場が分からなかったり、相手が過失を認めなかったりして、話し合いの難航が想定されます。このとき、弁護士に依頼できれば妥当な金額で交渉が可能です。

弁護士費用特約の保険料

弁護士費用特約の保険料は、年間4,000円前後が相場ですが、保険会社や補償内容によって異なります。

なお、ダイレクト型は保険料が安く、代理店型は割高な傾向です。

これから自動車保険を契約する場合は、弁護士費用特約をはじめ、オプションでかかる保険料も考えたうえで保険を選ぶと、契約後に後悔しにくくなります。

弁護士費用特約は付帯すべきか

弁護士費用特約を付帯すべきかどうかは、人によって異なります。

もし弁護士への依頼費用の全額を自前で支払えるなら不要です。

一方で「依頼費用をできるだけ抑えたい」「自分で弁護士への依頼費用を払えるか心配」と不安を感じるなら、万が一に備えて付帯するのがおすすめです。最終的な回収金額の増額も期待できます。

まとめ

弁護士費用特約は、事故後の示談交渉や損害賠償請求をおこなう際に、弁護士への依頼費用を補償する特約です。

年間で数千円の費用がかかるものの、弁護士へ依頼すれば相手から回収できる金額が増えやすくなり、スムーズな解決が望めます。

金銭的な負担を気にせず、弁護士へ依頼したい場合は、ぜひ付帯を検討してみましょう。

自動車保険の等級とは?知っておきたい等級の上げ方、保険料の決まり方

「自動車保険の等級を上げるには、どうすればいいんだろう?」

「自動車保険の等級がそもそも何なのか、よく分かっていない……」

と思ったことはありませんか?

自動車保険では等級が上がれば、基本的に保険料は安くなっていきます。

ただ、自動車保険の等級の仕組みをよく知らないまま何となく入っていると、余計な保険料を払っている可能性があります。これから自動車保険に加入する方は、もしかしたら高い等級からスタートして保険料を節約できるかもしれません。

そこで本記事では、自動車保険の等級の仕組みや、等級の上げ方を解説します。

自動車保険の等級について理解し、保険料を安くしましょう。

自動車保険の等級とは

自動車保険の等級とは、一般的に「ノンフリート等級制度」のことです。ノンフリート等級制度では、1等級から20等級に区分され、等級が上がると保険料は安くなるシステム。

等級によって、保険料の割引率や割増率が決まります。

所有する車が9台以下の場合はノンフリート等級制度、10台以上になると「フリート等級制度」を適用します。

自動車保険の等級の決まり方

自動車保険の等級は、1年間に保険を使った事故の有無によって決まります。事故に遭わず保険を使わなければ、次年度に等級が上がる仕組みです。初めて自動車保険を契約する場合、6等級からスタートします。

たとえば、初めて自動車保険を契約して1年間事故がなければ、次の年は7等級。その後も事故がなく保険を使わなければ、8等級、9等級……と1年おきに昇級します。

 

等級の決定に伴い、保険料も決まります。保険料の指標となるのが、事故有係数無事故係数

事故有係数・無事故係数とは、保険料の割引率を計算する際に使う値です。それぞれの等級では、事故があった場合と無事故の場合で、割引率が異なります。6等級以下は、事故の有無にかかわらず、保険料は同額です。

自動車保険の等級を上げるには

自動車保険の等級を上げる方法は、主に以下の通りです。

  1. 安全運転を心がける
  2. 本当に保険の適用が必要か考える
  3. 複数所有新規を利用する

それぞれ解説します。

1.安全運転を心がける

等級を上げる方法の1つ目は、安全運転を心がけること。安全運転を意識して事故を起こさなければ、翌年に等級は上がります。等級が上がるほど保険料の割引率も上がるので、地道ですが確実な方法です。

2.本当に保険の適用が必要か考える

等級を上げる方法の2つ目は、本当に保険の適用が必要か考えることです。事故を起こしただけでは、等級は下がりません。自動車保険の請求をするか否かで等級が変わります。

以下を計算して比べ、判断しましょう。

  • 等級が下がってどのくらい保険料が上がるのか
  • ケガの治療費や車の修理代はどのくらいかかるのか

もし、自動車保険の請求をしなくても事故の対応ができそうなら、保険金の請求をしないのも手です。

3.複数所有新規を利用する

等級を上げる方法の3つ目は、複数所有新規を利用することです。セカンドカー割引とも言います。

複数所有新規では、以下の条件を満たした場合、2台目以降の車は7等級からスタートできます。

  • 1台目の車が11等級以上である
  • 1台目と2台目ともに、以下のいずれかに該当(自家用8車種)
    • 自家用普通自動車
    • 自家用小型乗用車
    • 自家用軽四輪乗用車
    • 自家用小型貨物車
    • 自家用軽四輪貨物車
    • 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン以下)
    • 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン超2トン以下)
    • 特殊用途自動車(例:キャンピングカー)
  • 記名被保険者が以下の場合
    • 1台目と同一※(A)とする
    • (A)の配偶者※(B)とする
    • (A)もしくは(B)の同居の家族
  • 車両所有者が以下の場合
    • 1台目の記名被保険者※(A)とする
    • (A)の配偶者※(B)とする
    • (A)もしくは(B)の同居の家族
    • 1台目の車両保有者

 

たとえば、1台目の車を夫が持っていて、妻の車に複数所有新規を適用する場合。複数所有新規を適用して、妻の車は7等級からスタートできます。

一方、複数所有新規が使えない例としては、家族と離れて暮らす子どもの場合。この場合、車両所有者の子どもが一緒に住んでいないため「(A)もしくは(B)の同居の家族」ではありません。よって、複数所有新規として契約することは不可能です。

 

ちなみに、別居していても配偶者であれば、複数所有新規を利用できます。

条件に該当するのであれば、複数所有新規を適用して保険料を下げましょう。

事故で自動車保険を使ったとき、等級はどうなる?

万が一事故に遭ってしまい、自動車保険を使ったら、等級は下がります。自動車保険では、事故を以下の3つに分類しています。

  • 3等級ダウン事故
  • 1等級ダウン事故
  • ノーカウント事故

それぞれどんな事故なのか、例を挙げて解説します。

3等級ダウン事故の例

自動車保険を使った場合、ほとんどの事故は3等級ダウン事故に該当します。事故有係数適用期間は3年です。事故有係数適用期間とは、その名の通り事故有係数が適用される期間。等級にはそれぞれ「事故有り」と「無事故」で適用される割引率が異なります。事故有係数を使って保険料を計算される期間が、3等級ダウン事故の場合は3年という意味です。

3等級ダウン事故は、具体的に以下のような場合が該当します。

  • 自分の車を壊した
  • 他人を死傷させた
  • 他人の車や物を壊した
  • 1等級ダウン、もしくはノーカウント事故に該当しない事故を起こした

もし、現在10等級であれば、翌年は7等級になります。

1等級ダウン事故の例

自動車保険を使った場合に1等級ダウンする事故は、被害が自分の車だけの事故です。事故有係数適用期間は1年。

主に以下のような事故が、1等級ダウン事故に該当します。

  • 火災・爆発
  • 盗難や落書き
  • 台風・竜巻・洪水

もし現在10等級であれば、翌年は9等級になります。

ノーカウント事故の例

ノンフリート等級制度では、事故件数として扱わないのがノーカウント事故。保険を使っても無事故の時と同じく、翌年の等級は1つ上がります。ノーカウント事故を複数起こしても、等級には影響しません。事故有係数適用期間もありません。

ノーカウント事故は、具体的に以下が当てはまります。

  • 人身傷害保険事故
  • 搭乗者傷害保険事故
  • 無保険車傷害特約事故

主に、自分や家族がケガをした場合に該当します。

自動車保険の等級の豆知識

自動車保険の等級に関して、知っておきたい豆知識を以下の通りご紹介します。

  • 等級の引継ぎができる
  • 同じ等級でも事故の有無で保険料が変わる

それぞれ解説します。

等級の引継ぎができる

自動車保険の等級は、引継ぐことができます。自分で引継ぐことも、家族に引継ぐことも可能です。

自分で引継ぐ場合は、車の買い替え時や、保険会社の変更時に適用できます。

車を買い替えた際に、自動車保険の対象となる車を変更することを「車両入替」といいます。車両入替の際には、買い替えた車によって保険料の差分を清算しなければなりません。

 

保険会社を変更する場合は、契約期間中に変更するのか、満期日で変更するのかで手続きが異なります。

契約期間中に変更する場合、契約中の保険会社・新しく契約する保険会社、両社で手続きが必要です。

満期で保険会社を変更する場合、前の保険会社への連絡は不要です。ただし、事故を起こして保険を使った場合、他社からの契約変更を受け付けない場合があります。保険会社によって条件が異なるので、満期まで時間があるタイミングで保険会社に相談しましょう。

家族に自動車保険の等級を引継ぐ場合、子どもが車を購入した時や廃車時によく使われます。

 

特に子どもの年齢が若い場合、等級の引継ぎをするとお得です。全年齢補償や21歳以上補償を適用することが多くなりますが、保険料は高く設定されています。車の運転は年齢が若いほど事故のリスクが高いため、自動車保険料も高くなりがちです。

しかし、親の等級を子どもが引継げば、高い等級からスタートできます。その分保険料も安くすることが可能です。よくある流れとしては、子どもが親の等級を引継いでから、親が新規で自動車保険に加入するパターン。トータルで考えれば、保険料が安くなります。

注意点としては、等級の引継ぎは同居していることが前提である点です。進学や就職で子どもが上京して別居している、といった場合には使えません。

 

廃車の際も等級は引継ぎができます。海外赴任・長期の入院などで、しばらく車の運転をしない場合、自動車保険も解約するケースがあります。その際には、中断証明書を発行しておけば、また自動車保険を契約する際に、以前の等級からスタート可能です。

保険会社によって、中断証明書の発行条件や、等級を維持したまま再開する条件が異なります。契約している保険会社に確認してみましょう。

同じ等級でも事故の有無で保険料が変わる

事故の有無で、同じ等級でも保険料が変わり、割引率に10~20%の差が生まれます。

たとえば以下の表を参照すると、同じ12等級でも、11等級の人が1等級上がった場合の割引率は48%。15等級の人が3等級ダウン事故を起こした場合、割引率は27%になります。

 

等級 無事故(割引率) 事故有り(割引率)
11等級 47% 25%
12等級 48% 27%
13等級 49% 29%
14等級 50% 31%
15等級 51% 33%

損害保険料率算出機構「自動車保険参考純率改定説明資料」から抜粋)

事故有係数と無事故係数、どちらが適用されるかで、金額差が大きく開きます。無事故を目指して、安全運転を心がけましょう。

まとめ

この記事では、自動車保険の等級について、主に以下を解説しました。

  • ノンフリート等級制度は20等級に分類される
  • 等級によって自動車保険料が決まる
  • 等級が上がるほど、自動車保険料が安くなる
  • 等級を上げるには、安全運転を意識する

自動車保険の料金は、可能な限り安く抑えたいもの。ご紹介したように、複数所有新規で契約・等級の引継ぎといった方法はあります。しかし、基本的には安全運転を心がけるのが一番です。

事故を起こさないように注意し、コツコツ等級を上げていきましょう。