自賠責保険はいつ加入する?加入手続きや名義変更の流れを解説

初めて車を手にする人でも、「車を持ったら絶対に入らないといけない保険がある」という話を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

その“絶対に加入しなればならない”のが「自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)」です。

自賠責保険はいつ、どのタイミングで加入しなければならないのか、素朴な疑問を持つ人も多いでしょう。

一般的に自賠責保険の加入手続きを自分で行う必要はありませんが、場合によっては何らかの対応が必要となることがあるかもしれません。

今回は、知っておくと安心な自賠責保険の加入方法や名義変更の流れについて詳しく解説します。

自賠責保険は車体ごとに強制加入となる

自賠責保険は、法律で加入が義務づけられている保険です。“人”ではなく“車”にかける保険で、車1台所有するごとに1契約が必要となります。

とはいえほとんどの場合、車の購入先(ディーラーや中古車販売店など)で当たり前のごとく手続きが済まされるため、基本的にこちらが何か手続きをする必要はありません。

保険料の支払いについても、車を購入する際の諸費用の中に「自賠責保険料」としてあらかじめ組み込まれているケースが多く、別途支払い手続きが必要となることもありません。

自賠責保険はどの保険会社で加入しても、保険料や補償内容はまったく同じであるのが特徴です。そのため、特にこちらから申し出ない限り「保険会社を選ぶ」といった作業も必要ないでしょう。

そうした意味でも、自賠責保険=強制保険であることがいえるのです。

【車取得シーン別】自賠責保険に加入するタイミング

自賠責保険に加入しなければ、公道を運転することは法律上不可能となります。そのため、納車前に加入手続きが済まされているのが基本です。

自賠責保険に加入するタイミングは具体的にいつなのか、取得シーン別に見ていきましょう。

新車購入の場合

ディーラーで購入する新車は、車の購入契約が済んだら納車に向けてさまざまな手続きが行われます。運輸局でナンバーを取得する際の必要書類の中に「自賠責保険証明書」があるので、それまでに自賠責保険に加入する必要があります。

自賠責保険に加入しなければナンバーが取得できず、納車もできません。つまりナンバーを取得していれば、自賠責保険の加入手続きは完了していることにもなります。

中古車購入の場合

中古車の場合、購入時に車検が残っていれば自賠責保険の加入手続きをする必要はありません。ただし、納車前に名義変更だけは済ませておきましょう。

自賠責保険の保険期間が切れている場合、名義変更に加え「再加入手続き」が必要となります。基本的には販売店で対応してくれるので、指定された必要書類を用意しましょう。

新車とは違いすでにナンバーがつけられた中古車であっても、自賠責保険の手続きが完了しなければ公道を走れないため、原則納車ができません。

譲渡の場合

親や知人から車を譲り受けた場合は、中古車同様、車検切れでなければ名義変更だけで済みます。

車検切れの車を譲り受けたときは、自賠責保険の契約期間も過ぎていることが考えられます。その場合は、名義変更+再加入手続きが必要です。

譲渡の場合は、自分で再加入の手続きしなければならない点に注意しましょう。譲渡人(※譲渡した人。車の元の持ち主)と譲受人(※譲り受ける人。同車の新たな持ち主)、それぞれの印鑑が必要になるため、譲渡人の協力も必要になります。

すぐ乗れる状態で車が手元にあっても、自賠責保険の手続きが完了するまでは、くれぐれも運転しないように注意してください。

自賠責保険の加入の流れ

基本的には車を購入した販売店で加入手続きを済ませてもらえる自賠責保険ですが、自分で手続きを行うことももちろん可能です。

親戚が勤務する保険会社との付き合いなど、何らかの理由があって保険会社を自分で決めたいといったこともあるでしょう。その場合は車の購入時に、担当者にひとこと伝えておくと対応してくれるはずです。

ここでは、自分で自賠責保険に加入する際に知っておきたい流れについて解説していきます。

1.加入する保険会社を検討する

自賠責保険の提供をしている保険会社は、以下の10社です。

  • あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
  • AIG損害保険株式会社
  • 共栄火災海上保険株式会社
  • セコム損害保険株式会社
  • 損害保険ジャパン株式会社
  • 大同火災海上保険株式会社
  • 東京海上日動火災保険株式会社
  • 日新火災海上保険株式会社
  • 三井住友海上火災保険株式会社
  • 楽天損害保険株式会社

※参考:日本損害保険協会「自賠責保険取扱い会社」

 

この中から任意保険と同じ保険会社を選ぶのも良いでしょう。

任意保険と同じ会社であれば、万が一の保険金請求時の対応がスムーズにいきやすいといったメリットが挙げられます。

ちなみにどこで加入しても補償内容に変わりはないので「保険会社はあまり気にしない」という人は、

  • 自動車販売店(ディーラー、中古車販売店など)
  • 運輸支局
  • 自動車整備工場
  • カー用品店
  • 上記の表に記載した損保会社

上記いずれかの「損保代理店」に出向くことで、加入手続きを済ませることができます。

2.契約に必要な書類を用意する

自賠責保険の加入手続きには、車台番号や登録番号など、車の個体情報が分かるものが必要になります。

車検証(自動車検査証)があれば問題ありません。

3.保険期間を決める

加入時に、保険期間を決める必要があります。

基本的には車検と同じ時期に満期が訪れるように、新車の場合は3年(36ヶ月)、それ以外は2年(24ヶ月)を目安に保険期間を定めます。

以下、主な保険期間と保険料を記載したのでご参考にしてください。

2年の場合 3年の場合
24ヶ月 25ヶ月 36ヶ月 37ヶ月
自家用乗用車

(普通車)

20,010円 20,610円 27,180円 27,770円
軽自動車 19,730円 20,310円 26,760円 27,330円

※参考:自賠責保険ポータルサイト「主な車種・期間の保険料」

「スムーズに車検に通らなかった」などのトラブルを想定し、車検満了日+1ヶ月の猶予を設けた「25ヶ月」または「37ヶ月」での契約をおすすめします。

保険期間を決めたらその分の自賠責保険料を現金で支払い、加入手続きは完了です。

自賠責保険の新規加入は簡単に手続きができるので、その場で15分程度もあれば済むでしょう。ただ、電話やネットでの加入はできないことが多いため、代理店に出向く必要があります。

納車までの間に「自賠責保険証明書」が必要になる場合は、忘れずにディーラーに提出しましょう。

自賠責保険の名義変更の流れ

続いて、名義変更が必要になったときの流れについて見ていきましょう。

車を取得するタイミングで自賠責保険の名義変更が必要になるのは、主に「中古車を購入する場合」「車を譲り受ける場合」です。

特に親や知人から車を譲り受ける場合は、自分で名義変更の手続きをする必要があるため、流れを知っておくと安心できるでしょう。

1.加入中の自賠責保険の保険会社に問い合わせる

まずは、加入中の自賠責保険の保険会社を調べて、名義変更したい旨を電話で問い合わせます。その際「自賠責保険証明書」を手元に置くとスムーズです。

いきなり代理店に出向くことも可能ですが、保険会社によって対応が異なるため二度手間にもなりかねません。

2.必要書類を準備する

名義変更の内容や誰が手続きするかによっても用意するべき書類は異なりますが、基本的には以下の書類が必要です。

  • 自賠責保険証明書
  • 自賠責保険承認請求書(譲渡人・譲受人それぞれの押印あり)
  • 譲渡意思が確認できる書類(自動車売買契約関係書類など)
  • 本人確認書類(免許証など)

その他、場合によっては譲渡人の印鑑証明書や謄本などが必要になるケースがあります。

保険会社に問い合わせて、必要な書類をあらかじめ確認しておくと良いでしょう。

3.郵送または代理店窓口に出向いて手続きをする

必要書類を用意したら、代理店窓口に出向いて手続きを済ませます。譲渡人・譲受人、どちらが出向いても手続きができます。また、行政書士などの代理人に依頼することも可能です。誰が手続きするかによって必要書類が異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。

保険会社によっては郵送での手続きも可能です。

ただし郵送の場合、保険会社によっては3週間ほど時間がかかるため、その間運転ができないことになります。(自賠責保険証明書を携帯せず運転した場合には罰則があります)

急ぎの場合は代理店窓口に出向いて、手続きを済ませるのがおすすめです。

自賠責保険の更新時期はいつ?

自賠責保険の更新時期は、車検と同時期であるケースが一般的です。

ディーラーや整備工場、ガソリンスタンドなどに車検に出して、自賠責保険の更新までまるごと依頼する場合は、特に気にしなくても問題はありません。

念のため確認したいときは、車検の見積書の中に「自賠責保険料(法定費用)」といった記載がないか見てみると良いでしょう。

保険会社を指定したい場合など、自賠責保険の更新手続きを自分でするという人は、忘れずに車検前までに更新を済ませましょう。「自賠責保険証明書」がないと車検に通過することができないため要注意です。

自賠責保険に加入せずに運転したときの罰則

自賠責保険は法律で加入が義務づけられている保険です。もし未加入のまま運転した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられるうえ、免許停止処分にもなります。

気を付けたいのは、販売店に任せず自分で加入手続きをするケースや、車検切れと同時に自賠責保険が切れてしまうといったケース。正しい手順を踏んで確実に加入や更新手続きをしなければ、罰則の対象となるため注意しましょう。

また紛失などが原因で、自賠責保険証明書を所持せずに運転していた場合でも、30万円以下の罰金が科せられます。 万が一証明書を紛失した場合、速やかに保険会社に再発行依頼をしましょう。

自賠責保険の加入が済んだら任意保険も忘れずに

自賠責保険はいわゆる“強制保険”なので、特に自分で手続きせずとも、車の購入時に販売店側が対応してくれます。

しかし「任意保険」は、加入する保険商品や補償内容を自分で決めなくてはなりません。

万が一に備えて、納車日に間に合うよう、購入契約が済んだら速やかに任意保険も検討しましょう。

自賠責保険と任意保険の補償内容の違い

「自賠責保険に加入するのに任意保険まで本当に必要なの?」と疑問に思う人も多いかもしれません。

ドライバーが任意保険の加入も必要だとされる背景には、自賠責保険で受けられる補償範囲の狭さが挙げられます。

以下、自賠責保険と任意保険の補償内容の違いを簡単に記載したのでご覧ください。

補償内容 補償金額 保険料
自賠責保険 対人のみ ~4,000万円

(※介護を要する後遺障害1級の場合)

一律
任意保険 対人・対物

※人身傷害や車両保険などの補償も付帯可

~無制限 年齢や運転歴などの条件により異なる

自賠責保険で補償されるのは、相手側の身体に生じた損害のみで、車などの“物損”は補償の対象外となっています。それに対して任意保険では、モノに対する補償もカバーされます。

また自賠責保険は補償金額に上限があるのに対し、任意保険は「無制限」まで設定が可能です。このことからも任意保険は、自賠責保険の補償だけでは足りない部分を補う保険であることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

完全介護状態など、場合によっては億単位の損害賠償が発生するケースも考えられます。万が一を想定した場合、自賠責保険の補償を上乗せする「任意保険」への加入は必須であるといっても過言ではないでしょう。

まとめ:自賠責保険&任意保険には必ず加入しよう!

ドライバーなら知っておきたい、自賠責保険の加入の流れについて解説しました。

自賠責保険は原則、車を購入した販売店にて納車前に加入手続きが済まされますが、何らかの理由があって自分で手続きをする場合は忘れずに加入しましょう。

また車を持つことが決まったら、あわせて任意保険も検討しておきたいところです。納車日が決まれば任意保険にも加入できるため、こちらも忘れずに手続きを済ませましょう。