他車運転特約とは?補償の対象となるケースや3つの注意点を解説

「他車運転特約とはどのような特約だろう」

「自分にとって他車運転特約は必要なのか」

このような疑問をもったことはありませんか?

他車運転特約は、他人の車を運転する機会の多い人が、ぜひチェックしておきたい特約です。

本記事では、他車運転特約がどのような特約なのかを解説します。補償を受ける際の注意点も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

他車運転特約とは

他車運転特約は、他人の車を運転している時に起こしてしまった事故に備えるための特約です。

自動車保険に自動で付帯されており、追加で保険料を支払う必要はないことが一般的です。

自動車保険は通常、車を対象にして保険をかけます。しかし、他車運転特約では人に対して保険をかけます。

そのため、他人の車で事故を起こしたとしても、 自分の保険を使って補償を受けることが可能です。

車の所有者への負担を軽減しながら、事故の対応を進められます。

他車運転特約が必要なケース

他車運転特約は、以下のようなケースで必要です。

  • 友人の車を借りて、数人で交代しながら運転する場合
  • 旅行先でレンタカーを運転する場合
  • 車検中の代車を運転する場合

自分以外が所有する車を運転する機会が多い人は、他車運転特約が付帯されているか、補償内容はどのようなものか、確認してみましょう。

他車運転特約の補償の対象

ここからは、他車運転特約の補償の対象を、以下のとおり解説します。

  • 補償の対象者
  • 補償の対象となる車

それぞれ順番に紹介します。

補償の対象者

他車運転特約で補償の対象者となるのは、下記に当てはまる人です。

  • 記名被保険者
  • 記名被保険者の配偶者
  • 記名被保険者または配偶者の同居の親族
  • 記名被保険者または配偶者の別居の未婚の子
  • 記名被保険者の業務(家事は除く)に従事中の使用人

ただし、車の契約条件で補償対象外になっている人は、他車運転特約においても補償の対象外です。

例えば、 自動車保険で運転者を本人(記名被保険者)に限定する特約を付帯している場合は、子どもが事故を起こしても他車運転特約の対象外です。

また、保険会社によって補償の対象者が異なる場合もあります。他車運転特約の補償の対象者が誰になっているのかを、改めてチェックしてみましょう。

補償の対象となる車

他車運転特約で補償の対象になる車は、自家用8車種に該当する車です。

自家用8車種とは、以下の車を指します。

  1. 自家用普通乗用車
  2. 自家用小型乗用車
  3. 自家用軽四輪乗用車
  4. 自家用小型貨物車
  5. 自家用軽四輪貨物車
  6. 自家用普通貨物車(0.5トン以下)
  7. 自家用普通貨物車(0.5トン超2トン以下)
  8. 特種用途自動車(キャンピングカー)

自家用8車種に該当するのであれば、レンタカーも補償の対象です。

一方で、他人から借りている車でも、数年間ずっと借り続けているケースでは、他車運転特約の対象外となる恐れがあります。

また、記名被保険者やその配偶者、同居の親族同士が所有する車で事故を起こした場合も、補償の対象外です。

補償の対象車はあくまでも他人の車に限ります。

他車運転特約で補償を受ける際の3つの注意点

他車運転特約を受ける際には、以下3つの注意点があります。 

  1. 車両保険に加入している必要がある
  2. 停車中や業務中の事故は補償の対象外
  3. 補償を受けると等級が下がる

注意点をそれぞれ解説します。

1.車両保険に加入している必要がある

1つ目の注意点は、借りた自動車が破損して補償を受けたい場合は、契約している自動車保険で車両保険に加入している必要がある点です。

車両保険をセットにしていれば、借りている車の時価額を限度額として、補償を受けられます。もしくは、対物賠償保険の金額を限度額とします。

なお、借りている車の損害分のみを補償の対象とするため、 代車の用意にかかった費用などは補償の対象外です。

2.停車中や業務中の事故は補償の対象外

停車中や業務中の事故は補償の対象外である点も、注意が必要です。

ただし、以下のように、詳細なルールは保険会社によってさまざまです。

  • 信号や踏切待ちは対象
  • 路上のパーキングスペース停車中は対象外

他にも、被保険者が役員である法人が所有する自動車や、酒気帯び運転・無免許運転の場合は補償の対象外です。

補償の対象にならないケースは、保険会社によって異なる場合があるので、契約前に一度確認することをおすすめします。

3.補償を受けると等級が下がる

3つ目の注意点は、他車運転特約の補償を受けると等級が下がる点です。

自分の所有する車で事故を起こしたときと同じように、補償を受けると自身のノンフリート等級が3等級もしくは1等級ダウンします。車の所有者の等級には影響がありません。

なお、ノンフリート等級が下がると保険料の割引率が低くなるため、保険料が割高になります。

損害の程度や割高になった場合の保険料の金額なども考慮して、補償を受けるかどうかを決めるのも1つの方法です。

まとめ

他車運転特約は、他人の所有する車で事故を起こしてしまった際に、自分の加入する自動車保険で補償を受けられる特約です。

ほとんどの場合、他車運転特約は自動車保険に自動で付帯されています。

他人の保険を使うことなく補償を受けられるため、車を借りる機会が多い人には欠かせない特約です。

ただし、車両保険への加入が必要・停車中や業務中の事故は対象外など、注意すべき点もあります。

保険会社によって細かいルールも異なるため、すでに自動車保険を契約中の方も、これから自動車保険を契約する方も、補償内容をチェックしてみましょう。

自動車保険に弁護士費用特約は不要?特徴と保険料を解説

「自動車保険に弁護士費用特約は付帯したほうがいいの?」と思ったことはありませんか?

本記事では、弁護士費用特約の概要をまとめました。弁護士費用特約の内容を理解し、自分に必要なのか判断するためにも、ぜひ最後までご覧ください。

弁護士費用特約とは

弁護士費用特約とは、弁護士への依頼費用を補償する特約です。交通事故で被害者になった際に利用でき、弁護士へ損害賠償請求を依頼する場合や、法律相談をしたい場合などに使えます。

「損害賠償請求なんて、弁護士じゃなくて保険会社にやってもらえばいいんじゃない?」

このように考えた方もいるかもしれませんが、もらい事故では、保険会社に示談交渉を依頼できません。なぜなら弁護士法人ではない保険会社が法律事務を実施すれば、以下の弁護士法第72条に抵触するためです。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)

 

第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。

(引用:弁護士法

もらい事故で被害者になったときは、保険会社ではなく弁護士へ依頼します。この場合に利用できるのが弁護士費用特約であり、弁護士に示談交渉を依頼できます。

このように、弁護士費用特約に加入していれば、弁護士へ依頼する際の自己負担額を軽減することが可能です。

弁護士費用特約を付帯する3つのメリット

ここからは、弁護士費用特約を付帯するメリットを紹介します。弁護士費用特約のメリットは下記の3つです。

  1. 慰謝料の増額が期待できる
  2. もらい事故でも弁護士に示談交渉を依頼できる
  3. 事故後の手続きや相手とのトラブル対応も任せられる

それぞれ解説します。

1.慰謝料の増額が期待できる

1つ目のメリットは、弁護士へ依頼すると慰謝料をより多く受け取れる可能性があることです。理由として、下記2つの背景が挙げられます。

  1. 提示される示談金は相場よりも安いことが多い
  2. 加害者側の示談相手(保険会社)は交渉に慣れている

加害者サイドの保険会社から提示される金額は、妥当な示談金よりも低い場合があります。保険会社は自社で設けている水準に従って、慰謝料を提示するためです。

しかし、示談交渉に慣れていなければ、相場がどのくらいなのかを判断することは困難です。プロである弁護士に依頼すれば、示談金の妥当な金額を把握したうえで、適切な金額の交渉が望めます。

また、示談相手である保険会社は示談交渉に慣れており、示談金の増額を交渉しようとしても反論してくるかもしれません。この場合も示談交渉を弁護士に任せれば、保険会社は裁判に発展することを懸念して、交渉を受け入れる可能性があります。

なお、弁護士費用特約を使えば依頼費用はカバー可能なことが多く、損しにくいといえます。

2.もらい事故でも弁護士に示談交渉を依頼できる

もらい事故の場合、弁護士法により保険会社は示談交渉ができません。もらい事故では、被害者に過失はないと見なされるため、被害者は慰謝料の支払いが不要です。そのため、弁護士法72条により、保険会社が被害者の代理として示談交渉をすることができません。

しかし、弁護士へ示談交渉を依頼することは可能です。弁護士費用特約を付帯している場合は依頼費用が補償されるので、依頼費用の負担を下げられると言えます。

3.事故後の手続きや相手とのトラブル対応も任せられる

交通事故の後は、以下のようにさまざまな手続きが必要です。

  • 示談交渉
  • 休業損害の申請
  • 労災保険への給付金の請求
  • 後遺障害等級認定の申請

上記の手続きが初めての場合、申請に手間取りやすいうえに、事故のケガで思うように身体が動かないことも考えられます。

加えて、以下のようなトラブルの発生も予想されます。

  • 治療費支払いの打ち切り
  • 過失割合の見積もりが不適切

弁護士へ依頼した場合は、挙げたような手続きやトラブルに対応してもらえることがあります。スムーズな解決を望むのであれば、弁護士への依頼がおすすめです。

▶自動車事故を起こした時の保険請求手続きの詳しい流れはこちら

弁護士費用特約を付帯する3つのデメリット

ここまで、弁護士費用特約や弁護士へ依頼するメリットをお伝えしました。以降では弁護士費用特約を付帯するデメリットを3つお伝えします。

  1. 年間で数千円の保険料がかかる
  2. 家族内で補償の重複が発生する恐れがある
  3. 事故後に特約を付帯しても補償されない

それぞれ順番に解説します。

1.年間で数千円の保険料がかかる

1つ目のデメリットは、年間で数千円の保険料が発生することです。保険料は会社によって異なりますが、およそ2,000~4,000円のコストがかかります。

ただ、事故後に回収できる金額を考えたとき、年間で数千円ほどの保険料ならば支払ったほうが安心できるかもしれません。

また、条件に合致している場合は、家族も弁護士費用特約の補償の対象です。車を運転する人が多い家庭や運転する頻度が高い場合は、弁護士費用特約の付帯を考えてみることをおすすめします。

2.家族内で補償の重複が発生する恐れがある

補償の重複とは、補償の範囲が重複してしまうことを意味し、複数の保険に加入している場合に起こり得ます。

一例として、次のケースで考えてみましょう。

  • 夫婦で別の保険に加入
  • 夫と妻は弁護士費用特約をそれぞれの保険で付帯
  • どちらの保険も家族を補償

上記の場合、どちらの保険も夫と妻双方の事故をカバーするので、補償の重複が発生しています。

加入する前に、家族が加入している保険で弁護士費用特約を付帯していないか、チェックしましょう。

3.事故後に特約を付帯しても補償されない

事故の後に弁護士費用特約を付帯しても補償は受けられない点も、注意が必要です。

事故が発生し、「示談金が安いから弁護士に依頼したい」「示談交渉に自信がない」などと感じても、弁護士費用特約に加入して補償を受けることはできません。

特約を利用して、少しでも負担を抑えつつ弁護士へ依頼したいなら、早めに付帯することをおすすめします。

弁護士費用特約を活用できる場面

実際に弁護士費用特約を利用できるケースとして、具体的に下記の場面が挙げられます。

  • もらい事故で被害者になった場合
  • 保険会社の提示してきた金額に納得できない場合
  • 相手が無保険で交渉に応じようとしない場合

もらい事故の被害者は、保険会社の示談交渉サービスを利用できません。そのため、専門家を頼りたいのであれば、弁護士に依頼することになります。

また、保険会社が提示した金額に納得がいかない場合も、弁護士に依頼することで、示談金額の増額が期待できます。

事故相手が任意保険に加入していない場合も、弁護士は頼もしい存在です。事故相手が無保険のときは、相手方のバックに保険会社がいないため、素人同士で示談交渉を進めます。

しかし、お互い示談金額の相場が分からなかったり、相手が過失を認めなかったりして、話し合いの難航が想定されます。このとき、弁護士に依頼できれば妥当な金額で交渉が可能です。

弁護士費用特約の保険料

弁護士費用特約の保険料は、年間4,000円前後が相場ですが、保険会社や補償内容によって異なります。

なお、ダイレクト型は保険料が安く、代理店型は割高な傾向です。

これから自動車保険を契約する場合は、弁護士費用特約をはじめ、オプションでかかる保険料も考えたうえで保険を選ぶと、契約後に後悔しにくくなります。

弁護士費用特約は付帯すべきか

弁護士費用特約を付帯すべきかどうかは、人によって異なります。

もし弁護士への依頼費用の全額を自前で支払えるなら不要です。

一方で「依頼費用をできるだけ抑えたい」「自分で弁護士への依頼費用を払えるか心配」と不安を感じるなら、万が一に備えて付帯するのがおすすめです。最終的な回収金額の増額も期待できます。

まとめ

弁護士費用特約は、事故後の示談交渉や損害賠償請求をおこなう際に、弁護士への依頼費用を補償する特約です。

年間で数千円の費用がかかるものの、弁護士へ依頼すれば相手から回収できる金額が増えやすくなり、スムーズな解決が望めます。

金銭的な負担を気にせず、弁護士へ依頼したい場合は、ぜひ付帯を検討してみましょう。

車内身の回り品特約はいらない?補償内容や必要性を解説

自動車事故に遭ったとき、損傷するのは車だけとは限りません。

衝突により、車内に積まれた荷物まで壊れる可能性もあるでしょう。

車両保険では「車体の損傷」を補償してくれますが、たとえ事故の衝撃による損傷とはいえ、荷物までは補償してもらえません。

しかし「車内身の回り品特約」を付帯すれば、車内に積まれた荷物の損傷も補償されるのです。

今回は、車内身の回り品特約の補償内容や必要性について解説します。

車内身の回り品特約とは?

車内身の回り品特約は、自動車事故の発生により車内に積載された荷物が損傷した場合に、損傷した荷物に対して補償を受けられる保険です。一般的に車両保険の特約として付帯することができます。

事故の衝撃で車が大きな損傷を受ければ、トランクや車室に積まれた荷物にも被害が及ぶ可能性も十分にあるでしょう。そんなとき、車内身の回り品特約を付帯していれば安心です。

なお、車内身の回り品特約は保険会社によって、正式名称や補償内容が異なります。特に補償内容は意外と重要な部分が異なるケースもあるので、契約前の内容確認が非常に大切です。

車両保険との違いは?

車両保険で補償されるのは、車本体の損傷のみです。ボルトやねじなどであらかじめ車本体に固定されているものであれば、車両保険の補償対象になっています。(代表的な例は備え付けのカーナビです)

後付けされたオプション品(カーナビやドライブレコーダーなど)や、車内に積まれた荷物の損傷に関しては、車両保険からの補償は当然ながら受けられません。

事故の際に受けられる補償は車本体だけで良いか、それとも積載された荷物に関しても補償を受けたいのかによって、補償の必要性が異なります。

▶車両保険の内容・保険料について詳しい説明はこちら

特約を使用したとき、等級はどうなる?

特約の使用による等級への影響は保険会社によって異なります。

等級には影響しない「ノーカウント事故」となる保険商品もあれば、1等級ダウンにあたる商品もあります。気になる人は、契約前に補償内容の確認をおすすめします。

ただし車内身の回り品特約を使うシーンは、原則として「事故が起きたとき」なので、多くの場合「車の損傷」もセットになるでしょう。

損傷した車の修理に車両保険を使用した場合は等級ダウンの対象となるので、等級を気にされる人は注意してください。

▶等級による保険料の決まり方や、等級の上げ方についての解説はこちら

車内身の回り品特約の主な補償内容

ここからは車内身の回り品特約の主な補償内容について解説していきます。

「全部の荷物が対象になるの?」

「保険金額はどのくらい?」

といった疑問をこちらで解消していきましょう。

補償対象となるモノ

まずは、補償の対象となる荷物について見ていきましょう。

基本的には以下のような荷物が補償の対象となります。

  • カメラ
  • ゴルフ用品
  • キャンプ用品
  • 釣り用品
  • スキー用品
  • 衣類
  • バッグ
  • 楽器 など

上記に挙げた荷物の中から、保証書や購入時のレシートなど、購入日時と購入金額が分かる資料のあるものが、車内身の回り品特約の補償対象となります。

また保険会社ごとの補償内容によっても異なりますが、カーナビやドライブレコーダーといったカー用品は、後付けされたモノであれば補償が受けられるケースが多くあります。

反対に上記に挙げた中にも、保険会社によっては補償対象外となるケースもあるため、注意深く補償内容を確認してみてください。

補償対象外となるモノ

中には、車内身の回り品特約では補償されない荷物もあります。

  • 自転車、サーフボード(※)
  • パソコン、タブレット端末、携帯電話(※)
  • 通貨、小切手、株券、有価証券、電子マネー、クレジットカード
  • 貴金属、書画、骨董
  • 設計図、証書、模型
  • 眼鏡、コンタクトレンズ、補聴器、義肢、義歯
  • 動物、植物 など

例えばバッグが盗難に遭った場合、バッグ本体は補償されても現金類は補償の対象外になります。

(※)自転車、サーフボード、パソコン等の電子機器は、保険会社によっては補償の対象となるケースもあります。

保険金額と免責金額

車内身の回り品特約の保険金額は、30万円が相場です。

中には「10万円まで補償」「100万円まで補償」「10万円、30万円、50万円の中から選択」のように、保険会社によって保険金額は異なります。

免責金額(※)も保険会社ごとに異なりますが、あらかじめ「3,000円」または「5,000円」の免責が設定されているケースが一般的です。

(※)免責金額分は自己負担となります。例えば3,000円の免責金額が設定されている場合、3,000円を差し引いた補償額が保険金として受け取れる仕組みです。

補償が適用されないケース

そもそもこの補償が使えない事故のケースについても確認しておきましょう。

  • 身の回り品に存在する欠陥、摩滅、腐しょく、さび、その他自然の消耗による損害
  • かすり傷や塗料のはがれなど、機能上に影響しない程度の損害
  • 車の屋根またはトランクに設置されたキャリア等に固定された荷物の盗難による損害
  • 故障や紛失による損害
  • 故意または重大な過失によって生じた損害
  • 地震、噴火またはこれらにより生じた津波に起因する損害
  • 無免許運転・飲酒運転・薬物乱用など正常な運転ができない状態で生じた損害
  • レース・ラリーなどの競技または曲技に使用する目的で生じた損害(練習やそれらを行う場所で起きた損害も含む)

例えば、事故の衝撃で助手席に置いていたカメラが落ちてしまい、カメラ本体に外傷がついたケース。「傷は付いたものの、問題なく操作できる」状態であれば、補償は受けられません。

また、キャリアなどで車の外側に固定されている荷物に関しては、事故による損傷は補償の対象となりますが、盗難のみ対象外になっているのが一般的です。

盗難に関する補償内容も、保険会社ごとに対応が変わるため、注意して確認しておきたいところです。

車内身の回り品特約の保険料目安は?

車内身の回り品特約は、いくらで付帯できるのでしょうか。

以下に大手2社とダイレクト型保険2社の保険料を記載したのでご覧ください。

<試算条件>
車種:ヤリスクロス
等級:15等級
年齢:30歳
免許証の色:ブルー
使用目的:日常・レジャー
走行距離:3,000km以下

保険会社 保険料(年間) 保険金額 免責金額
あいおいニッセイ同和損保 900円 30万円 なし
東京海上日動 1,080円 20万円

(10~100万円の範囲で設定可)

5,000円
ソニー損保 120円 10万円 5,000円
イーデザイン損保 1,079円 30万円 5,000円

数百円程度で特約を付帯できる保険会社もあれば、1,000円以上の保険料が必要となる保険会社もあるようです。

また条件によって保険料が左右されることもあれば、一律で保険料が設定されている保険会社もあります。

車内身の回り品特約の注意点

車内身の回り品特約には、主に3つの注意点があります。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

保険会社ごとに補償内容が大きく異なる

主な補償内容について解説してきましたが、中にはそれに当てはまらないケースもあり、保険会社ごとに補償内容の違いが目立つ特約になっています。

特に車内身の回り品特約のような特殊なケースを補償可能とする特約は、商品としての差別化が図りやすく、独自の補償を提供する保険会社も多くあります。

例えば盗難のケース一つを取っても、

「車両ごと盗難に遭ったケースのみ補償」
「車上荒らしによる荷物の盗難を補償」
「盗難は補償対象外」

といったように、保険会社によって大きな違いが生じるため注意が必要です。

故障や紛失は補償対象外

例えば乗降時、車内の荷物を誤って落としたことに気付かずそのまま紛失してしまったケースや、カーナビが故障により動かなくなったケースなどは、車内身の回り品特約の補償対象にはなりません。

あくまでも「自動車事故による損傷」が補償の対象です。

また、盗難被害については補償範囲に含む保険会社とそうでない保険会社が存在します。

「盗難の場合も補償してほしい」という人は、契約前に補償内容の確認をしましょう。

補償されるのは時価額まで

車内身の回り品特約の補償を受ける際は、購入時期や購入金額が分かる資料(レシートや保証書など)を保険会社に提示する必要があります。

資料をもとに、減価償却費を差し引いた額のみ補償が受けられる仕組みです。

修理費や買い替え費用が全額支払われるわけではないので注意しましょう。

車内身の回り品特約が必要なのはこんな人

車内身の回り品特約が必要になるのは、車内に趣味用品などの高額な荷物を積載している人です。

例えば、

「ゴルフクラブを常にトランクに収納している」
「釣り用品を車に積んで出かけることが多い」
「仕事で使うスーツを車に常備している」

など、常に車内に荷物を載せている人や、高額な趣味用品を載せて車で出かける機会が多い人は車内身の回り品特約の補償がいざというときに役立つかもしれません。

年間1,000円程度で付帯できる特約なので、事故が起きたときの荷物の損害も気になる人は、付帯してみてはいかがでしょうか。

まとめ:自分に合った補償が受けられる保険会社を探そう

事故発生時、車内に積載していた荷物が損傷した場合に補償が受けられる「車内身の回り品特約」。保険金額や補償の範囲など、具体的な補償内容は保険会社ごとにさまざまな設定がされているのが特徴です。

いざというときに十分な補償が受けられるよう、補償を受けたいモノの価値や受けられる補償範囲などを考慮して、自分に最適な保険会社を探してくださいね。

事故時レンタカー費用特約はいらない?補償内容や必要性を解説

日常的に車を使用している人の中には、“生活に車が欠かせない”人もいるでしょう。

自動車事故を起こして車が損傷したとき、修理中の移動手段がなくて困る」という人は、レンタカーを借りるなどして修理期間中の代車を手配することになります。

とはいえ、レンタカーにもお金がかかるもの。

事故時レンタカー費用特約は、そんなときに役に立つ補償です。

今回は、事故時レンタカー費用特約の補償内容や必要性について解説します。

事故時レンタカー費用特約とは

事故時レンタカー費用特約とはその名の通り、事故により車が損傷して修理が必要となった場合、修理期間中に手配するレンタカーの費用を補償してくれる保険です。
保険会社によって、「レンタカー会社から借りた場合のみ補償」「わ・れナンバーであれば補償」「指定のレンタカー会社から借りた場合のみ補償」など、さまざまな補償内容が挙げられます。

※レンタカーのナンバーに記される一文字のひらがなは、一般的に「わ」「れ」が使用されます

また2023年1月1日以降の契約では、レンタカーの在庫不足や、ケガにより車の運転ができないといった理由で、移動手段としてタクシーやバスなどを利用した場合の交通費を補償する保険会社もあります。

実際にソニー損保では、2023年1月1日以降の契約で、タクシーやバスなどの費用を補償する予定です。

参考:ソニー損保|事故時レンタカー費用特約

基本的に車両保険のオプションとして付帯可能ですが、特約保険料は安いとはいえないため、必要な人のみ付帯することをおすすめします。

特約を使うと等級は下がる?

事故時レンタカー費用特約のみを使っても等級に影響はありません。等級が下がる心配はないので、特約を付けておけばいざというとき安心して補償を受けることができます。

ただ車の修理が必要な場合、車両保険を使うケースが多いかもしれません。

車両保険自体は補償を使うことで等級が下がるため、注意しましょう。

▶自動車保険の等級の上がり方や保険料についてはこちら

修理中、代車は無料で借りられない?

「車検や点検で用意される代車は無料だよね?修理中もディーラーや整備工場で代車を無料で借りられないの?」
こんな疑問が浮かぶ人もいるかもしれません。

車検や点検時にはあらかじめ代車が用意され、無料で貸し出されることもありますが、修理時の代車費用は請求されるケースが一般的です。

車検や点検は事前に予約して代車を準備できるのに対し、事故による修理は突発的であるため、すぐに代車を用意できないといった背景もあります。

「お金は出すから代車を貸して!」と頼んでも、ディーラー側に代車の用意がない場合には貸し出すことができません。

そのため事故による修理の際は、自分で代車を手配しなければならない可能性が生じます。

事故時レンタカー費用特約の補償内容

それでは、事故時レンタカー費用特約の詳しい補償内容を見ていきましょう。

主な補償内容

事故時レンタカー費用特約は、事故により車の修理が必要となった場合、修理期間中(車が手元にない期間)に借りたレンタカー費用の実費が補償される保険です。

保険会社によっては事故による修理以外に、故障や盗難の場合も補償が受けられるケースがあります。

1日あたりのレンタカー費用 × レンタカーの使用日数

のうち、実際に負担した金額が基本的な補償内容です。

「保険金額(1日あたりのレンタカー費用)」と「レンタカーの使用日数」には、それぞれ上限が定められています。

■保険金額

保険金額の上限や決め方は、保険会社ごとに異なります。

「5,000円」「7,000円」「10,000円」のいずれかから日額を選べる保険商品が一般的です。

その他、あらかじめ上限が定められている保険商品もあれば、自分に合った保険金額を1,000円刻みで決定できる商品など、さまざまな補償内容が挙げられます。

■レンタカーの使用日数

レンタカーの使用日数は「30日」と上限が定められているのが一般的です。

「事故が起きた日から30日」なのか「レンタカーを借りた日から30日」なのか、基準は保険会社によって異なります。

また、保険会社によっては「故障の場合は15日」などの日数制限が設定されているケースもあります。

補償の対象となる人

  • 契約の車の所有者

補償の対象外となるケース

事故時レンタカー費用特約の補償が使えないケースは以下の通りです。

  • 故意または重大な過失によって生じた損害
  • 地震、噴火またはこれらにより生じた津波に起因する損害
  • 詐欺または横領によって生じた損害
  • 欠陥、摩滅、腐しょく、さび、その他自然の消耗による損害
  • 故障による損害(※保険会社ごとに異なる)
  • 無免許運転・飲酒運転・薬物乱用など正常な運転ができない状態で生じた損害
  • レース・ラリーなどの競技または曲技に使用する目的で生じた損害(練習やそれらを行う場所で起きた損害も含む)

「故障による損害」に関しては、保険会社ごとに異なる点に注意が必要です。

「故障の場合もOK」とする商品と「故障は対象外」とする商品の2つに分かれます。

事故時レンタカー費用特約の保険料

続いて、事故時レンタカー費用特約の特約保険料について見ていきましょう。

保険料は契約者の年齢や補償範囲のほか、保険金額をいくらに設定するかによっても異なります。

目安として、日額と同額の保険料が年間で上乗せされると考えて良いでしょう。

例えば保険金額を日額5,000円に設定した場合、年間約5,000円の保険料がプラスになるといったイメージです。

中には、自動車保険の契約に自動で付帯する「ロードサービス」の補償内容の中に、レンタカー費用特約が含まれているケースや、車両保険に自動付帯されるケースもあります。その場合、特約保険料は無料になります。

保険金額の決め方は?

保険金額を自分で設定できる場合、どのようにして保険金額を決めれば良いのでしょうか。

目安として、必要な車のグレードの平均日額を参考にするのがおすすめです。

自分の車と同グレードでレンタカーを借りた場合、日額はいくらになるのか。平均を算出して保険金額を決定しましょう。

車の種類別レンタカー費用の目安

レンタカー費用は、車のグレードや車種によって平均日額が異なります。

軽自動車、コンパクトカー、セダン、SUV、ワンボックスの1日あたりの基本料金目安を記載したので、保険金額を決める際の参考にしてください。

車種 24時間あたりの基本料金 日額目安
軽自動車 3,800~6,820円 5,000円
コンパクトカー 4,000~7,150円 7,000円
セダン 6,000~9,900円 7,000円または10,000円
SUV 7,500~13,200円 7,000円または10,000円(※)
ワンボックス 10,000~20,900円 10,000円~20,000円(※)

近年普及している格安レンタカーと大手のレンタカー会社では、基本料金に大きく差が生じますが、長期間借りる場合は割引が適用されるケースもあります。

「万が一のとき、どの会社からレンタカーを借りられそうか?」

「長期で借りるとどのぐらい割引になるのか?」

といった観点も考慮しながら平均日額と照らし合わせて、最適な保険金額を設定してください。

(※)中には日額10,000円以上~20,000円の保険金額を設定できる保険も存在するので、必要に応じて自分に合った保険商品を探すと良いでしょう。

事故時レンタカー費用特約の注意点

事故時レンタカー費用特約には、いくつか注意点があります。

保険会社によっては以下に挙げる注意点をカバーする補償を提供している商品もあるので、契約前に必ず補償内容を確認してください。

故障による修理は対象外

事故時レンタカー費用特約は、事故以外の原因で故障した場合には補償の対象外となるケースがあります。あくまでも、“事故により” 修理が必要となった場合のみ、レンタカー費用が補償される保険です。

とはいえ近年では補償の見直しが行われており、保険会社によっては「事故時以外の故障も対象」としている保険商品も存在します。

レンタカー以外の代車費用は対象外

こちらも保険会社によって補償内容が異なりますが、基本的にはレンタカー会社から借りるレンタカー費用のみが補償の対象となります。

  • ディーラーや整備工場から有料で代車を借りた場合
  • 知人から車を有償で借りた場合

こうした費用は補償の対象外となるケースが一般的です。

車両保険を付帯した契約のみ付帯可能

基本的には車両保険に付帯可能な特約なので、車両保険を契約しなければ、事故時レンタカー費用特約は付帯できません。

車両保険の保険料+レンタカー費用特約の保険料がかかるため、その分保険料が割高になる可能性もあります。

保険会社によっては、車両保険に自動付帯されるケースや、自動車保険の契約に自動付帯するロードサービスに補償が付いてくるケースなど、補償の内容はさまざまです。

自分が加入する保険には、どんな補償が自動付帯するのか、その補償はどんな内容なのかを契約前にしっかりと確認することが大切です。

事故時レンタカー費用特約が必要な人

最後に、事故時レンタカー費用特約が必要な人について考えてみましょう。

この特約がもっとも必要となるのは、「日常生活に車の使用が欠かせない人」です。

通勤や通学、毎日の子どもの送迎に車の使用が欠かせない人や、買い物は車でしか行けないような遠い場所にしかないなど、それぞれに車が必要な事情があるでしょう。

2~3日で終わるような修理であればレンタカー費用もそこまで高額にはなりませんが、修理期間が1ヶ月近くかかるような大々的な修理の場合はその分レンタカー費用もかさみます。

例えば2台目以降の車を持っているケースや、いざというときは親戚に車を借りられるといった人にとっては、不要な特約となる可能性が高いのではないでしょうか。

まとめ:自分に必要な補償を見極めよう

事故時レンタカー費用特約は、必要な人とそうでない人に分かれる補償です。

そのため、“自分にとって必要な補償かどうか”を見極めることが大事だといえます。

特約を付帯すればその分充実した補償を得られますが、使わない補償にまで保険料を支払う必要はありません。

いざというときの出費をシミュレーションして、必要だと感じた人は迷わず特約を付帯しましょう。

対物賠償責任保険とは?補償内容や対物超過修理費用補償との違いを解説

自動車の任意保険の補償の中で、もっとも大切なのは「相手方に対する補償」

いざというときのトラブルを最小限に抑えるために加入する保険なので、特に事故の相手方に対する補償はしっかりと備えておきたいものです。

「対物賠償責任保険」は、自動車事故における“物損”の損害賠償金を負担してくれる大事な保険です。

今回は自動車の任意保険における対物賠償責任保険の補償内容や、設定すべき保険金額について解説します。

併せて検討しておきたい「対物超過修理費用」の特約の内容についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

対物賠償責任保険とは

対物賠償責任保険は、事故の相手方の車をはじめとする、“モノ(=財物)”に対して生じる損害賠償金を補償してくれる保険です。

補償の対象は相手の車だけとは限りません。

例えば事故の相手が車ではなく自転車だった場合、こちらの過失によって相手方の自転車が壊れてしまったときは、「対物賠償責任保険」から自転車の修理費が支払われます。

車や自転車といった乗り物に限らず、自動車事故の衝撃で他人のモノを壊した場合であれば、補償が適用されます。

▶対人賠償責任保険の補償内容はこちら

対物賠償責任保険と車両保険の違いは?

意外にも間違えやすい「対物賠償責任保険」と「車両保険」の違いについて。

自動車事故の際、いずれも「車に生じた損害」を補償してくれる保険にあたりますが、大きな違いは補償の対象、すなわち「誰の車に対する補償なのか」による違いです。

対物賠償責任保険は事故の相手方に対する補償なので、“他人”が所有する車の損害を補償してくれます。

車両保険は、自分の車が損害を受けた場合に保険金が受け取れる仕組みの保険です。車両保険には事故の相手方に対する補償の役割は一切ありません。

▶車両保険の保険料・保険金はこちら

対物超過修理費用補償特約とは?

対物賠償責任保険と併せて紹介されることが多い「対物超過修理費用補償特約」。

対物賠償の保険金が支払われる事故において、相手の“車”の修理費が時価額を超えた際、対物賠償責任保険では賄えない部分の補償が受けられるのが特徴です。

限度額は50万円に設定されることが多く、最近では対物賠償がつく保険に自動セットされている保険商品も多くあります。

対物賠償責任保険の補償内容

次に対物賠償責任保険の補償内容について詳しく見ていきましょう。

こちら側に過失がある自動車事故によって他人の財物が壊れた際、相手方に支払う損害賠償金が補償されるのが「対物賠償責任保険」の役割です。

物損の損害賠償の種類は、「直接損害」と「間接損害」の大きく2つに分けられます。

直接損害

直接損害とは、車や自転車など壊れた“モノ”に対して生じる損害のことをいいます。

  • 相手方の車や自転車の修理費
  • 建物の修復費用(お店に突っ込んだ事故など)
  • 事故の衝撃によって破損した他人のスマホ

など、他人の財物に直接生じた損害は「直接損害」にあたります。

間接損害

間接損害とは、相手のモノを壊した結果、生じた損害のことです。

例えば路線バスに衝突し、バスの運行予定時刻を大幅に狂わせてしまった場合、運行の遅れによって生じた損害が「間接損害」にあたります。

一般的には直接損害がメインになりますが、事故の影響によって他人になんらかの損害を与えてしまった場合には、間接損害の賠償請求が発生するケースもあります。

【具体例】

  • 店舗に突っ込み、休業させた
  • 誤って線路に立ち入り、電車の運行を停止させた など

保険金が支払われないケース

続いて、対物賠償責任保険からの保険金が受け取れない事故についても確認していきましょう。

まず、下記のいずれかの人が所有・使用・管理する財物に生じた損害は、補償の対象外となっています。

  • 記名被保険者
  • 契約の車を運転中の人またはその配偶者
  • 契約の車を運転中の人の父母または子(同居している場合)
  • 被保険者またはその配偶者
  • 被保険者の父母または子(同居している場合)

対人賠償同様、家族関係にある人同士で起きた事故は、基本的に補償の対象外です。

また、モノ自体は他人の所有物であっても、その人の許可を得て使用中に発生した事故の場合は、対物賠償責任保険からは保険金が支払われません。

 

なお、下記の事故により生じた損害も補償の対象外ですのでご注意ください。

  • 契約者または被保険者の故意により発生した損害
  • 台風、洪水、高潮といった水災害に起因する損害
  • 地震、噴火またはこれらにより生じた津波に起因する損害
  • 戦争、外国の武力行使、暴動、核燃料物質などに起因する損害
  • レース・ラリーなどの競技または曲技に使用する目的で生じた損害(練習やそれらを行う場所で起きた損害も含む)

対人賠償同様、相手方に対する補償なので、こちらが飲酒運転や無免許運転といった違反をしていた場合であっても補償の対象にはなります。

対物賠償責任保険の保険金額

対物賠償責任保険の保険金額は、いくらが適切なのでしょうか。

やはり、相手方に対する補償は「無制限」に設定するのがおすすめです。

事故の相手や事故状況、損害を与えた場所など、事故によって補償すべき金額は大きく異なりますが、こちらも対人賠償保険同様、少額で済むような事故ばかりとは限りません。

実際に高額賠償の事例もあるので一部紹介します。

認定損害額 裁判所 事故年月日 判決年月日 被害物件
2億6,135万円 神戸地裁 1985.5.29 1994.7.19 積荷

(呉服・洋服・毛皮)

1億3,450万円 東京地裁 1991.2.23 1996.7.17 店舗

(パチンコ店)

1億2,036万円 福岡地裁 1975.3.1 1980.7.18 電車・線路・家屋
1億1,798万円 大阪地裁 2007.4.19 2011.12.7 トレーラー

参考:損害保険料率算出機構 2021年度自動車保険の概況「第43表 交通事故高額賠償判決例(物件事故)より

高額賠償の事例を見る限り、店舗や電車、トレーラー、積荷といった物件事故は、賠償金が高くなる傾向にあるようです。

どんなに気を付けて運転していても事故はいつどんな風に発生するか予測不可能なもの。

もらい事故であってもこちらに過失割合が1割でもついてしまえば、相手方に対して損害賠償金を支払う必要性が生じます。

また、強制加入である自賠責保険からは、物損に対する補償は一切受けられません。

万が一に備える意味でも、対物賠償の保険金額は「無制限」に設定しておくと安心できるでしょう。

対物賠償責任保険が適用となる事故の例

ここではよくありそうな事例を挙げて、対物賠償責任保険が適用となる事故について確認していきましょう。

【例1:信号待ちしていた前の車に衝突し、リアバンパーの修理が必要となった】

信号待ちで停車中の車に後ろから衝突した場合、過失割合は10:0とされるケースが一般的です。この場合、相手方の車の修理費を全額負担する必要があります。

対物賠償責任保険から補償されるのは車の時価額まで。万が一年式の古い車で時価額が著しく低い場合は修理費が時価額を上回ってしまい、結果的に保険だけでは賄えなくなる可能性が生じます。

【例2:運転操作を誤って店舗に突っ込んでしまった】

店舗に突っ込んだ場合も、過失割合は10:0です。

お店の窓ガラスが割れた、店内に陳列されていた商品にも傷を付けてしまったなど、さまざまな損害が懸念されますが、これらは対物賠償責任保険から補償が受けられます。

お店側が休業を余儀なくされた場合、休業期間中の損失や従業員の給与などを賠償しなければならないケースもあります。

こんな事故の場合は……?

自宅の駐車スペースにうっかり車をぶつけて、車庫が損傷してしまうといった事故もあるでしょう。そんなとき、果たして対物賠償責任保険から保険金が受け取れるのでしょうか?

ポイントは、駐車スペースが「自己所有物」または「他人の所有物」かどうかにあります。

  • 一戸建ての場合→NG(自損事故保険や車両保険から補償)
  • マンションやアパートなどの共用スペースが損傷した場合→OK

自己所有の一戸建てにある車庫の場合、自己所有物を破損したことになるので、相手方の損害を補償する対物賠償責任保険からの補償は受けられません。

もし自宅がマンションやアパートの場合、車庫は共有物にあたるため、対物賠償責任保険から補償を受けることができます。

対物賠償責任保険の注意点

ここまでの解説で、対物賠償責任保険は「時価額を限度に補償」といった話も挙げてきました。中には「保険金額を無制限にしていたら関係ないのでは?」といった疑問を浮かべる人もいるかもしれません。

実はここに対物賠償責任保険の落とし穴があります。

対物賠償責任保険で補償される範囲は、車の時価額まで。実際に支払われた修理費や買い替え費用などをまるごと補償してくれるわけではありません。

事故の相手方の車の年式が古いケースでは、修理費が時価額を超えてしまうこともありますが、その場合、超過した分は自腹で支払う必要があります。

保険金額を「無制限」に設定していても、必ずしも全額が補償されるわけではない点に注意しましょう。

対物超過修理費用補償特約は必要?

前項で挙げた注意点を回避するために「対物超過修理費用補償特約(※)」が必要になります。(※)正式名称は保険商品により異なります。

ここで、「対物賠償責任保険」と「対物超過修理費用補償」の違いをおさらいしましょう。

名称 補償内容 特徴
対物賠償責任保険

(基本補償)

事故の相手方の財物を壊したことにより生じた損害賠償金を補償 相手の車に対する補償は「時価額まで」しか適用されない
対物超過修理費用補償

(オプション)

相手方の車の修理費が時価額を上回った場合、50万円を限度に保険金が支払われる 対物賠償の弱点をカバーできる

基本的な補償が「対物賠償責任保険」で、車の修理費が時価額を超えた場合のみ補償が受けられる特約が「対物超過修理費用補償」にあたります。

両方セットにすることで補償を充実させることができます。

対物超過修理費用補償の特約保険料は数百円程度で済むため、事故による思わぬ出費を抑えるためにも備えておくのがおすすめです。

最近では、対物超過特約が自動付帯されている保険商品も多くあります。

迷ったらあらかじめ特約がセットになった商品の中から選ぶのも良いでしょう。

まとめ:対物賠償には対物超過修理費用補償もつけよう

対物賠償責任保険は、相手方の車やモノが損傷し、損害賠償責任が生じたときに補償が受けられる保険です。

しかし特に古い年式の車の場合、修理費が時価額を超えるケースがあるため、保険金額を「無制限」に設定した対物賠償責任保険であっても十分に補償を受けられないことがあります。

対物賠償にはオプションの「対物超過修理費用補償」も付けておくと安心できるでしょう。

補償を正しく理解して必要な補償を選びとり、無駄なく安心できる保険に加入しましょう。

車両保険とは?補償内容や必要性をわかりやすく解説

自動車保険への加入を検討するとき、車両保険を付帯すべきか迷う方は少なくありません。

車両保険の保険料は、自動車保険に付帯できる補償のなかでも比較的高額です。

 

余分な保険料の支払いを防ぐためには、補償が適用される範囲や支払われる保険金の決まり方などを把握することが大切です。

今回は、車両保険の補償内容や必要性、保険料を抑えるポイントなどを分かりやすく解説します。

最後まで読んでいただくと、車両保険に加入すべきか判断しやすくなるため、ぜひご一読ください。

車両保険とは何かわかりやすく解説

車両保険とは、任意加入の自動車保険に付帯できる補償の1つです。

車両保険を付帯すると、衝突や接触などの事故で車が損傷したときに保険金が支払われるため、修理費用や買い換え費用などをカバーできます。

車両保険の補償が適用される事故の例は、以下の通りです。

 

  • 対向車と衝突して自身の運転する車が損傷した
  • ハンドル操作を誤って電柱に激突した
  • 豪雨による洪水で車が水没した など

 

また、車両本体だけでなく、ETCの車載器や車内に固定されたカーナビなどの装備品が負った損害も補償の対象です。

車両保険の種類

車両保険には、自損事故や自転車との衝突事故などを幅広く補償する「一般タイプ」と、事故の相手の車両がいるときを補償する「エコノミータイプ(車対車+A)」があります。

一般タイプとエコノミータイプについて、補償が適用される範囲はそれぞれ以下の通りです。

 

一般タイプ エコノミータイプ
他の車との衝突
盗難
落書きなどのいたずら
台風や洪水などの自然災害
火災・爆発
自損事故 ×
当て逃げ ×
地震・津波・噴火 × ×

※上記は車両保険の一般的な補償範囲を記載したものであり、実際の補償範囲は、契約内容や事故の状況などで異なります。

 

エコノミータイプは、自損事故や相手がわからない事故などが補償の対象外です。

補償範囲が狭いぶん、エコノミータイプのほうが一般タイプよりも保険料は安くなります。

 

一方で、一般タイプとエコノミータイプのどちらに加入していても、台風や洪水などで負った車両の損害は補償されます。

しかし、地震や津波、噴火などで負った車両の損害は、一般タイプとエコノミータイプのどちらを選んでも補償されません。

車両保険の付帯を検討すべき理由

「交通事故を起こしたときは、相手から支払ってもらった賠償金で車を修理できるため車両保険は必要ない」と考えている方も多いのではないでしょうか?

たしかに、事故相手が自動車保険に加入していれば、保険会社からの保険金で賠償金を支払ってもらえる可能性があります。

 

しかし、相手方から支払われる賠償金は過失割合に応じて相殺されるため、自動車の修理費用のすべてを賄えるとは限りません。

例えば、車の損害額が200万円、過失割合が「自分50:相手50」であった場合、相手が加入する自動車保険から補償される金額は100万円のみです。

残りの100万円は、ご自身の貯蓄や資産などでカバーしなければなりません。

 

車両保険に加入していれば、ご自身の過失割合分である残りの100万円を保険金でカバーできます。

また、自損事故や自然災害、当て逃げなどで車が損害を負った場合、一般タイプの車両保険に加入していなければ、修理費用や買い換え費用は全額自己負担となるでしょう。

 

このように、車が損害を負ったときに多額の修理費用や買い換え費用が発生すると想定される場合は、車両保険に加入しておくと安心です。

車両保険の付帯率(加入率)

では、自動車を所有している人のうち、車両保険を付帯している割合はどれくらいなのでしょうか。

損害保険料算出機構の調査によると、2020年3月末時点における車両保険の加入率の全国平均は、以下の通りです。

 

  • 自家用普通自動車(3ナンバー車):62.3%
  • 自家用小型自動車(5ナンバー車・7ナンバー車):51.9%
  • 軽四輪乗用車:48.0%

※出典:損害保険料算出機構「自動車保険の概況」

このように、約5〜6割の自動車が車両保険に加入して、事故が発生したときの損害に備えているようです。

車両保険の保険金額の決まり方

車両保険に加入する際は、保険金の支払上限額である「保険金額」を設定します。

車両保険の保険金額は、基本的に車の時価相当額に対応しており、自動車の用途や車種、車名、年式などをもとに各保険会社が決めています。

 

初度登録から年数が経過するごとに、経年劣化によって失われたと考えられる価値の分だけ、車両保険の保険金額は減少していく仕組みです。

中古車の場合、車両保険の保険金額が購入金額よりも低くなるケースが少なくありません。

たとえプレミアが付くような人気車種であっても、初度登録から一定期間が経過している車は保険金額が低く設定されことがあります。

「全損」と「分損」で保険金の計算方法が異なる

車の修理費用が契約時に決めた保険金額を上回る場合や、車両が盗難にあった場合は「全損」、修理費用が保険金額未満である場合は「分損」となります。

支払われる保険金の決まり方は、 全損と分損で以下のように異なります。

 

  • 全損:支払われる保険金=保険金額
  • 分損:支払われる保険金=損害額−免責金額

※保険金額が上限

 

免責金額は、損害額のうち自己負担する金額です。

例えば、車の修理費用が30万円、免責金額が5万円であった場合、保険会社から支払われる保険金は25万円(30万円−5万円)となります。 

免責金額の決め方

車両保険の免責金額は「1回目5万円、2回目以降10万円」のように、1回目の事故と2回目以降の事故で適用される金額をそれぞれ決めるのが一般的です。 

 

一方で「1回目10万円、2回目以降10万円」「1回目0万円、2回目以降0万円」など、1回目と2回目以降の免責金額を同じ額に設定することもあります。

 

また契約によっては「免責ゼロ特約」が付帯される場合もあります。

免責ゼロ特約とは、所定の要件を満たすと1回目の事故にかぎり車両保険の免責金額がゼロ円になる特約です。

例えば、免責金額を「1回目5万円、2回目以降10万円」に設定していた場合、免責ゼロ特約が適用されると、1回目の事故が発生したときの免責金額が5万円ではなく0円になります。

車両保険の保険料

車両保険の保険料は、対人賠償保険や対物賠償保険と同じく「ノンフリート等級」を用いて計算されます。

ノンフリート等級とは、保険料に適用される割増率や割引率の等級区分のことです。

 

初めて自動車保険を契約したときは基本的に6等級※からスタートし、1年間、無事故であれば翌年は等級が1つ上がります。※複数台所有していた場合は7等級からのスタート

ノンフリート等級が4〜20等級であると、所定の割引率が適用され支払う保険料が安くなり、等級の数値が上がるほど割引率も高くなっていく仕組みです。 

一方で1〜3等級になると、保険料に所定の割増率が適用されます。

▶自動車保険のノンフリート等級について詳しく知りたい方はこちら

車両保険の保険金を請求すると翌年の等級がダウンする

車両保険を使うと翌年の保険料を計算する際に、ノンフリート等級が1等級または3等級ダウンし保険料が割高になります。

ダウンする等級は、以下の通り事故の種類によって決まります。

 

事故の例
3等級ダウン事故 ・他人の車との衝突事故(当て逃げを含む)

・自分が運転する車を電柱にぶつけるなどの自損事故

1等級ダウン事故 ・車両の盗難

・台風や洪水などの自然災害

・落書きなどのいたずら

・飛び石

 

例えば、他人の車と衝突して自分が運転する車が損傷し、車両保険の保険金を請求した場合は3等級ダウン事故となります。

 

ノンフリート等級が14等級であった場合、翌年は11等級にダウンして適用される割引率が減少するため、支払う保険料は増えてしまうでしょう。

なお車両保険だけでなく、対人賠償保険や対物賠償保険などノンフリート等級を用いて保険料が計算されるすべての補償に影響が出ます。

事故によって車が負った損害が小規模であり、保険金を請求することで翌年の保険料が大幅に増えるのであれば、車を自費で修理するのも方法でしょう。

 

ただし、車両保険に「無過失事故に関する特約」が付いていると、追突事故のようにご自身に過失がない事故については、保険金を請求しても翌年度の等級は下がりません。

車両保険の必要性を判断するポイント

では、車両保険はどのような方にとって必要性が高いのでしょうか?

ここでは、車両保険の必要性を判断する際のポイントを4点解説します。

車の時価

車両保険で支払われる保険金は、原則として車の時価が上限となります。 

例えば、車の時価が高い新車の場合は、事故によって車が損害を負っても、車両保険の保険金で修理費用や買い換え費用をカバーしやすいです。

特に高級車の場合は、事故に遭ったときの修理費用や買い換え費用も高額になりやすいため、車両保険を付帯しておくと安心でしょう。

 

一方で、初度登録から10年以上経過している中古車は、車両保険に加入しても事故で車が損害を負ったときに十分な保険金が支払われないかもしれません。

車両保険を付帯すると保険料が増えるため、万一の場合に支払われる保険金の額を確認のうえ必要性を判断することが大切です。

車が損害を負うリスク

ご自身の通勤や子どもの送り迎えなどで日常的に車を使用している方は、運転する機会が増えるため、車が損害を負うリスクは高くなるでしょう。

また日常的に使用している車が事故で使えなくなると、生活に支障をきたしかねません。

そのため生活に車が必要不可欠な方にとって、車両保険の必要性は高いといえます

 

車両保険に加入すると、事故にあったとき保険金で修理費用や買い換え費用を賄いやすくなるため、日常生活への支障を最小限にできるでしょう。

ただし車を運転する頻度が少ないからといって、自動車保険が不要であるとは限りません。

例えば、運転技術に不安があり交通事故が心配な方は、車両保険に加入しておくと安心でしょう。

他にも、豪雨や台風などが発生したときに洪水や冠水などが起こりやすいエリアに住んでいる方は、車両保険に加入して備えるのも方法です。

ローン残債の有無

自動車ローンの返済中である方にとって、車両保険の必要性は高いといえるでしょう。

交通事故で車が全損になると、ローンの返済義務だけが残る恐れがあるためです。

 

2021年12月現在、性能の向上や装備の充実により、軽自動車であっても200万円を超えることがあるため、自動車ローンを組んで車を購入する方は少なくありません。

車両保険に加入していれば、事故で車が損害を負って多額のローンが残ってしまっても、保険金で完済できる可能性があります。

車両保険の保険料を抑えるポイント

「車両保険に加入したいけれども保険料が家計を圧迫する事態は避けたい」と考えている方も多いでしょう。

そこでここでは、車両保険に付帯する際の保険料を抑える方法について解説していきます。

エコノミータイプに加入する

エコノミータイプの保険料は、一般タイプよりも安く設定されています。

自損事故や当て逃げなどがカバーされなくても、車との衝突事故で負った自車の損害に備えるだけで良いのであれば、エコノミータイプを選ぶと良いでしょう。

 

ただし、自損事故や当て逃げなどのリスクにも備えたいのであれば、エコノミータイプではなく一般タイプを選ぶことが大切です。

免責金額を高くする

免責金額を高く設定すると、車両保険の保険料を安くできます。

例えば、免責金額を「1回目0万円、2回目以降5万円」とするよりも「1回目10万円、2回目以降10万円」としたほうが、保険料は安くなります。

 

5万円や10万円など、一定の金額までなら貯蓄から修理費用をまかなえるのであれば、免責金額を高く設定すると良いでしょう。

複数の保険会社を検討する

保険会社によって、自動車保険料の計算方法が異なります。

 

また、インターネットを通じて加入できる「ダイレクト型」の自動車保険は、保険ショップや自動車ディーラーなどで加入できる自動車保険よりも保険料が割安です。

そのため車両保険を付帯するかどうかにかかわらず、自動車保険を選ぶ際は複数の見積もりを取り寄せたうえで、保険料を比較して選ぶと良いでしょう。

 

ただし、保険会社によって事故が発生したときの対応可能時間や、ロードサービスの内容などが異なります。

保険料だけでなく、事故が発生したときのサービス内容も比較したうえで、加入する自動車保険を選ぶことが大切です。

まとめ

車両保険に加入すると、車が損害を負ったときに保険金が支払われるため、修理費用や買い換え費用を賄いやすくなります。

「新車や高級車を購入した」「日常的に車を使用している」「自動車ローンを返済中である」などに当てはまる方にとって、車両保険の必要性は高いと考えられます。

 

一方で、初度登録から年数が経過している中古車に乗っている場合は、車両保険に加入しても損害をカバーできるだけの保険金を受け取れないかもしれません。

乗っている車や車が損傷するリスクなどをもとに、ご自身にとって車両保険が必要かどうかを考えましょう。

また、車両保険には「一般タイプ」と「エコノミータイプ」があり、補償が適用される範囲や支払う保険料などが異なるため、内容や違いをよく理解したうえで選ぶことが大切です。